佐々木味津三 『右門捕物帖』 「なんのつらあてで死んだか知らねえが、世の…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「なんで自殺したのか知らねえけど、世の中には変わった奴がいるもんだね。将軍様の前で毒まで舐めるなんてしゃれてるけど、書き置きを笛の中に入れるなんて、もっとしゃれてるじゃねえか。こりゃどんな旦那様でも尻込みするわ。おめえが勝手に死んだのに、人がバラしたと思って睨んでたんだから。でもさ、この文句が気になるじゃねえか。『今にきさまらの首が獄門台に上がるだろう』って書いてあるけど、この『きさまら』ってのは誰のことなんだろ?」
「今それ考えてんだ。うるせえ、黙ってろ!」
「今すぐ奉行所に行って、訴訟箱の中を引っ掻き回してこい!」
「え? だってもう5時半過ぎですよ」
「5時半過ぎたって嫌だってのか?」
「いやじゃねえ、いやじゃねえよ。行けって言ったら地獄の果てまで行くけど、こんなに夜遅くちゃ門が開いてませんよ」
「『天下の一大事出来』って言や、大手門だって開けてくれるぜ」
「なるほどな。『天下の一大事』って、大久保彦左衛門様が使ったやつだろ? 一生の思い出に、俺もちょっと使わせてもらいますかね」

原文 (会話文抽出)

「なんのつらあてで死んだか知らねえが、世の中にはずいぶん変わったやつもあるもんだね。将軍さまの面前でわざわざ毒をなめやがったのもしゃれているが、書き置きを笛の胴の中にしまっておくなんぞは、もっとしゃれているじゃござんせんか。これじゃ、いかなだんなでも尾っぽを巻くなあたりめえでしょうよ。てめえが好きでおっ死んだものを、人がばらしたとにらんでたんだからね。しかし、それにしても、だんな、この文句が気になるじゃござんせんか。いまにきさまらの塩首が獄門台にのぼるだろうよと書いてあるが、このきさまらというそのきさまらは、なにものだろうね」
「今そいつを考えているんだ。うるせえ、しゃべるな!」
「今からお奉行所へ行って、訴訟箱の中をかきまわしてみてこい!」
「えッ! だって、もう五つ半すぎですぜ」
「五つ半すぎならいやだというんか」
「いやじゃねえ、いやじゃねえ。そりゃ行けとおっしゃりゃ唐天竺にだって行きますがね。こんなに夜ふけじゃ、ご門もあいちゃいませんぜ」
「天下の一大事出来といや、大手門だってあけてくれらあ」
「なるほどね、天下の一大事といや、大久保の彦左衛門様がちょいちょい使ったやつだ。一生の思い出に、あっしもちょっくら使いますかね」


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