GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「えっと……! ご、ご、ごめんなさい、だ、だんなを幽霊って言ったんじゃねえんですよ」
「だから、聞きたいことがあるんだ。そんなにブルブル震えずに、さっさとこっちに来いよ」
「い、い、いやだよ。ますます怖くなっちゃんじゃねえすか。ま、ま、まさか幽霊が出たからって、ばっさり斬り殺しちゃうとかないっしょ?」
「江戸っ子にしてはビビりだな。しょうがない、名前を名乗って捕まえてやる。俺は八丁堀の右門ってんだ」
「え? そ、そうでしたか。見損ないました。むっつり右門の旦那って聞けば、俺の応援してる旦那様じゃねえですか。そうと分かれば、急に元気が出ましたよ。なんでも聞いてくださいよ。もしかして幽霊の話とかだったりしません?」
「そうか、やっぱりそんな噂があるのか。さっきそっちが『それみろ』って言いそうになったから、きっと何かの噂を聞いてきたんだろうと思って捕まえたんだが、どこら辺りでそんな噂を聞いたんだ?」
「そこら辺って言うか、このすぐ近くですよ。向こうのよもぎヶ原に見えるのが本田様の屋敷で、あの先に変な家が一軒あるんです。塞がってたりすぐ空き家になったりして、いわくありげだって言われてたんですけど、この頃、山王祭りの頃から、変な噂を聞くんですよ。真夜中に縁の下で赤ちゃんの泣き声がしたとか、庭の大銀杏の木に白い煙が引っかかってたとか、不気味な話ばかりで」
「そうか。どうもご苦労だった」
「いえいえ、どういたし――ところで、旦那、あっさりしてますね。聞き終わるとサッサと歩いてうんですか? 用事ってそれだけでいいんですか?」
原文 (会話文抽出)
「これ、町人、まてッ」
「えッ……! ご、ご、ごめんなさい、だ、だんなを幽霊といったんじゃねえんですよ」
「だから、聞きたいことがあるんだ。そんなにがたがたと震えずに、もそっとこっちへ来い」
「い、い、いやんなっちまうなあ。ますます気味がわるくなるじゃござんせんか。ま、ま、まさかに出ていったところをばっさりとつじ切りなさるんじゃござんすまいね」
「江戸っ子にも似合わねえやつだな。しかたがない、名まえを明かしてとらそう。わしは八丁堀の右門と申すものじゃ」
「えッ。そ、そうでしたかい。お見それ申しやした。むっつり右門のだんなと聞いちゃ、おらがひいきのおだんなさまだ。そうとわかりゃ、このとおり急に気が強くなりましたからね。なんでもお尋ねのことはお答えしますが、もしかしたら、今の幽霊の話じゃござんせんかい」
「では、やっぱり、どこかにそんなうわさがあるんじゃな。今そちが、それみろい、いううちに出たじゃねえか、と口走ったようじゃったからな、たぶんそんなうわさでもしいしい来たんだろうと思って呼び止めたのじゃが、いったいそのうわさの個所はどの辺じゃ」
「どの辺もこの辺も、つい目と鼻の先ですよ。そう向こうのよもぎっ原に本田様のお下屋敷が見えやしょう。あの先に変な家が一軒あるんですがね。ふさがったかと思えばすぐとあき家になるんで、何かいわくがあるだろうあるだろうといっているうちに、ついこのごろで、あの山王さんのお祭り時分から、ちょくちょくと変なうわさを聞くんですよ。真夜中に縁の下で赤ん坊の泣き声がしたんだとか、庭先の大いちょうの枝に白い煙がひっかかっていたとか、あまりぞっとしないことをいうんですね」
「さようか。どうもご苦労だった」
「いいえ、どうつかまつりまして――ところで、だんなは、おやッ、ひどくあっさりしてらっしゃいますな。聞いてしまうともうさっさとお歩きですが、ご用っていうのはそれっきりですかい」