佐々木味津三 『右門捕物帖』 「ほしが当たったらしいな」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「星がよかったらしいね」
「さっすが、兄貴はすごいっすよ。千両役者の兄貴がいてくれりゃ、俺らも芝居やっていて気楽ですよ。聞いてくださいよ。こんなにすんなり功績を上げたなんて、俺も張り切るっす。あの後、辰之口のお屋敷に行って頼んだら、晩までって約束してたのにすぐに暇くれたんで、妹とふたりで小走りで四谷まで行ったんですよ。でも、乃武江はあんな顔してるから、どう見ても旦那様ってバレちゃうんですよ。だから心配したんだけど、兄貴が頭いいなら妹もそうみたいで、上手いこと横町のだんご屋の娘と仲良くなって、女の出入りを全部聞き出してきちゃったんですよ」
「じゃ、色っぽい女を嗅ぎ当てたんか」
「言うまでもないっすよ。なにしろ、美男子で一人暮らしで親も兄弟もいない、あるのは金の茶釜とか大判小判ばっかですから、女だってそら熱くなるでしょ。もちろんだんご屋の娘も信心深い人だったのに、乃武江が『僕もあの人には参ってた』とか言ったら、すっかり喋っちゃって、あそこのやお屋の姉ちゃんもそうとか、お隣の畳屋の姉ちゃんもそうとか、熱くなってた女の名前をいっぱい挙げてたら、特に仲がいいってのが出てきたんですよ」
「誰だ」
「そいつがまた、縁あって小唄の先生でね。まさに俺らのために出てきたような相手じゃねえっすか」
「なるほど。芝居の段取りとしては、割と簡単にネタが集まったわけだな」
「そう思ったんで。急いで妹を送り届けて、こうして汗だくで帰ってきたんです。なんでも、毎日みたいに男が入ってたみたいで、俺はやっぱりあいつが犯人だと思います。それに、女の方が歳上みたいなんで、余計そんな気がします。自分にしわが増えて、可愛い男はますます若くなって、他の女にチヤホヤされる。それじゃこのまま見てるよりって、荒っぽいことしちゃうのもよくあることっすよね」
「確かに。ところで、住所は聞いてきたんだろうな」
「聞き逃すわけないですよ。芝の入舟町だってさ」
「じゃ、ネタはある。涼みがてら、捕まえてこっかな」

原文 (会話文抽出)

「ほしが当たったらしいな」
「お手の筋、お手の筋。なにしろ、あっしという千両役者の兄貴がついているんだから、太夫もしばいがやりいいというものでさあね、まあよくお聞きなせえよ。こんなにとんとん拍手でてがらたてたこたあめったにねえんだから、あっしもおおいばりでお話ししますがね。あれから辰之口へめえってお屋敷に願ったら、晩までというお約束ですぐに暇くれたんでね、横っとびに妹とふたりで四谷まで出かけていったないいんですが、勤めが勤めなんだから、乃武江のやつめどう見たってお屋敷者としか見えねえんでしょう。だから、ずいぶん心配したんだが、兄貴がりこう者なら血につながる妹もりこう者とみえましてね。うまいこと横町のだんご屋の娘と仲よしになって、洗いざらい女出入りをきき込んじまったんですよ」
「じゃ、情婦めかしいやつをかぎ出してきたんだな」
「いうにゃ及ぶですよ。なにしろ、美男子のひとり者で親はなし、きょうだいはなし、あるものは金の茶釜に大判小判ばっかりときたんじゃ、女の子だって熱くなるなああたりめえじゃござんせんか、むろんのこと、だんご屋の娘もぼおっとなっていたお講中なんだからね。乃武江のやつが、あたしもあのひとには参っていたんだが、というようなかまをかけたら、すっかりしゃべっちまってね、あそこのやお屋のやあちゃんもそうだとか、お隣の畳屋のたあちゃんもそうだとか、いろいろ熱くなっていた女の名まえをあげているうちに、ひときわ交情こまやかというやつが出てきたんですよ」
「何者だ」
「そいつがまた筋書きどおり、笛には縁の深い小唄のお師匠さんというんだから、どう見たっておあつらえ向きの相手じゃござんせんか」
「なるほどな、事のしばいがかりだった割合にゃぞうさなくねたがあがるかもしれないな」
「と思いやしてね。大急ぎに妹のやつを送り届けておいて、このとおり大汗かきながらけえってきたんですがね。なんでも、毎日のように男のほうが入りびたっていたというんだから、あっしゃてっきりそいつが下手人と思うんですがね。それに、だいいち、女のほうが少し年増だというんだから、なおさらありそうな図じゃござんせんか。てめえはだんだんしわがふえる、反対に、かわいい男はますます若返って、いろいろとほかの女どもからちやほやされる、いっそこのままほっておくより――というようなあさはかな考えから、ついつい荒療治をするなんてこたあ、よくある手だからね」
「いかにもしかり。ところで、番地はむろんのことに聞いてきたろうな」
「そいつをのがしてなるもんですかい。芝の入舟町だそうですよ」
「じゃ、ぞうさはねえ。涼みがてらに、くくっちまおうよ」


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