GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「ちっ、生意気なことをおっしゃいますなよ。大きに大層なお方ですね。さぞお悔しいでしょうが、女の子の1人や2人、ちゃんとれっきとしたやつが、私だってありますよ」
「ほう、そいつは豪儀だな。一体、何歳ぐらいじゃ」
「うらやましくてもお怒りになりませんね」
「おまえの女なんぞ、うらやんでもしようがないじゃないか」
「じゃ申しますがね、聞いていただけでも嬉しいです、番茶も出花というやつで、ことしかっきり18ですよ」
「一向に初耳で、ついぞ思い当たらないが、その者は今江戸に在住か」
「ちぇっ、呆れてしまうな、そりゃどう見たって小町娘というほどの美人じゃございませんからね。旦那なんぞにはお目に留まりまいし、鼻もひっかけてはくださいますまいがね。それにしたって、江戸に住んでいるかはちょっとひどくないですか。かわいそうに、ああ見えたって、あいつは私の血を分けたたった1人の妹ですよ」
「ああ、乃武江のことか」
「ちぇっ、またこれだ。ああ言えばこう言う、こう言えばああいって、じゃなんですかい、旦那はそいつが乃武江って名前なことは知ってるが、私の妹だってことはご存じなかったんですか」
「知っているよ、知っているよ、知っていればこそ今思い出したんだが、――なんとかいったな、もう長いことどこかお大名のお屋敷奉公に上がっているとかいったけな」
「はい、そうです。辰ノ口向こうの遠藤様に、もう4年間ご奉公しているんですがね。それにつけても、ねえ、旦那。血を分けたきょうだいってものは、嬉しいです、ついきのうもきのうでしたがね、わざわざ前触れの 手紙をよこしましてね。近いうちにまたお宿下がりをもらうから、そのとき私の好きなところてんを、うんとこさえてくれると書いてありましたよ」
「そいつはもっけのさいわいだな。どうだろうな、きょう繰り上げて、乃武江にそのお宿下がりをもらうわけにいくまいかな」
「え? じゃなんですかい、旦那もところてんが好きなんですかい」
「食い意地の張っているやつだ。ところてんに用があるんじゃない、乃武江にちょっと内緒の用があるんだよ」
「え? 内緒のご用……? たまらねえことになったもんだね。そうれみろい。たまには身内の恥もさらしてみるもんじゃねえか。あんな者でもついうわさをしたばかりに、旦那が内緒のご用とおいでなすったんじゃねえか。これが縁になって、あのお多福が旦那の玉の輿に乗られるとなりゃ、私の門の名誉というものだ。ようがす、じゃ、ひとっ走り今から呼びに行ってきますからね。ちょっとお待ちなさいよ」
「バカだな。待て」
「え?」
「内緒の用だからといって、すぐきさまのように気を回すやつがあるかッ。女でなくちゃ役者になれんから、ちょっと乃武江を借りるんだ」
「ははあ、なるほどね。じゃなんですね。こんどの事件の手先にでもお使いなさろうっていうんですね」
「当たり前よ。1人者であった具合、女客の多かった具合から察するに、色恋からの毒殺と睨んでいるんだ」
「わかりました、わかりました。それだけ聞きゃ、私だって岡っ引きだ、あとはもうおっしゃらなくとも胸三寸ですよ。じゃ、なんですね、乃武江のやつをおとりに使って、誰か出入りの女客をつかまえ、そいつの口から色事を聞き出させようっていう算段ですね」
「しかり――だが、きさまのようにおしゃべり屋じゃあるまいな」
「ちぇっ。瓜の蔓にも茄子がなるってご存じじゃありませんか。血を分けたきょうだいだからって、おしゃべり屋ばかりじゃございませんよ。細工はりゅうりゅうだから、あご髭でも抜いて待ってらっしゃい」
原文 (会話文抽出)
「どうもしないさ。その若さで女の子に知り合いがないとなりゃ、口ほどにもないやつだと思ってな。これからおれは、きさまをけいべつするだけのことだよ」
「ちッ、めったなことをおっしゃいますなよ。大きにはばかりさまですね。さぞおくやしいでしょうが、女の子のひとりやふたり、ちゃんとれっきとしたやつが、あっしにだってありますよ」
「ほう、そいつあ豪儀だな。いったい、何歳ぐらいじゃ」
「うらやましくてもおこりませんね」
「おまえの女なんぞ、うらやんでもしようがないじゃないか」
「じゃ申しますがね、きいただけでもうれしいじゃござんせんか、番茶も出ばなというやつで、ことしかっきり十八ですよ」
「いっこうに初耳で、ついぞ思い当たらないが、その者はいま江戸に在住か」
「ちえッ、あきれちまうな、そりゃどうみたって小町娘というほどのべっぴんじゃござんせんからね。だんななんぞにはお目に止まりますまいし、鼻もひっかけてはくださいますまいがね。それにしたって、江戸に住んでいるかはちっとひどいじゃごわせんか。かわいそうに、ああ見えたって、あいつああっしの血を分けたたったひとりの妹ですよ」
「ああ、乃武江のことか」
「ちえッ、またこれだ。ああいえばこういい、こういえばああいって、じゃなんですかい、だんなはそいつが乃武江って名まえなことは知ってるが、あっしの妹だってことはご存じなかったんですかい」
「知っているよ、知っているよ、知っていればこそいま思い出したんだが、――なんとかいったな、もう長いことどこかお大名のお屋敷奉公に上がっているとかいったけな」
「へえい、さようで。辰之口向こうの遠藤様に、もう四年ごしご奉公しているんですがね。それにつけても、ねえ、だんな。血を分けたきょうだいってものは、うれしいじゃござんせんか、ついきんのうもきんのうでしたがね、わざわざ前ぶれの手紙をよこしましてね。近いうちにまたお宿下がりをもらうから、そのときあっしの好きなところてんを、うんとこさえてくれるとぬかしましたよ」
「そいつあもっけもないさいわいだ。どうだろうな、きょうくりあげて、乃武江にそのお宿下がりをもらうわけにいくまいかな」
「え? じゃなんですかい、だんなもところてんが好きなんですかい」
「食い意地の張っているやつだ。ところてんに用があるんじゃない、乃武江にちょっとないしょの用があるんだよ」
「え? ないしょのご用……? たまらねえことになったもんだね。そうれみろい。たまにゃ身内の恥もさらしてみるもんじゃねえか。あんな者でもついうわさをしたばっかりに、だんながないしょのご用とおいでなすったんじゃねえか。これがえにしになって、あのお多福がだんなの玉のこしに乗られるとなりゃ、おいらが一門の名誉というものだ。ようがす、じゃ、ひとっ走り今から呼びに行ってきますからね。ちょっくらお待ちなせえよ」
「バカだな。まてッ」
「えッ?」
「ないしょの用だからといって、すぐときさまのように気を回すやつがあるかッ。女でなくちゃ役者になれんから、ちょっと乃武江を借りるんだ」
「ははあ、なるほどね。じゃなんですね。こんどの事件の手先にでもお使いなさろうっていうんですね」
「あたりめえよ。ひとり者であったぐあい、女客の多かったぐあいから察するに、色恋からの毒殺とにらんでいるんだ」
「わかりやした、わかりやした。それだけ聞きゃ、あっしだって岡っ引きだ、あとはもうおっしゃらなくとも胸三寸ですよ。じゃ、なんですね、乃武江のやつをおとりにつかって、だれか出入りの女客をつかまえ、そいつの口から色ざたをきき出させようって寸法なんですね」
「しかり――だが、きさまのようにおしゃべり屋じゃあるまいな」
「ちえッ。うりのつるにもなすびがなるってことご存じじゃねえんですか。血を分けたきょうだいだからって、おしゃべり屋ばかりじゃござんせんよ。細工はりゅうりゅうだから、あごひげでも抜いて待ってらっしゃい」