佐々木味津三 『右門捕物帖』 「おきのどくだが、今度はお先にご無礼したな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「お気の毒だが、今度は俺が先に失礼したな。何もかも目星がついてしまったから、手柄はこっちがもらうぜ」
「とおっしゃいますと、どうしてなんでしょうか、あの一番が因縁相撲であったことも、それに関わって江戸錦がこの秀の浦の下手人であるということも、すっかり見破られたというんですか?」
「当たり前だ。見破ったからこそ、こうしてわざわざお前にも見せに連れてきたんじゃねえか」
「でも、ちょっと不思議じゃありませんか?」
「何が不思議だ」
「因縁を仕掛けられたのは江戸錦の方なんだから、その江戸錦が秀の浦を殺すなんて、ちょっと筋が通らない気がしますね」
「だって、こんな立派な証拠があるんだから、仕方ないじゃねえか」
「ほほう、立派な印籠のようですが、どこか江戸錦の持ち物だっていう目印でもあるんですか?」
「そのでかい字が読めねえのか、印籠の表に、「贔屓より江戸錦へ贈る」って金泥流しの文字がちゃんと書いてあるじゃねえか」
「なるほどね。この字が見えねえようじゃ、俺も盲目に違えねえや。そうすると何ですな、昔からある古いパターンだけど、この印籠が秀の浦の死体のそばにでも落ちてたってことですか?」
「言うまでもねえよ。それも、ただのところに落ちてたんじゃねえんだ。この江戸錦の野郎をいくら締め上げても、知らぬ存ぜぬと言い張って因縁相撲の詳しいことを言わねえから、それなら秀の浦と2人を突き合わせて自白させようと思って、こいつを捕まえながら秀の浦の後を追いかけていったら、かわいそうに、四ツ谷見附の土手先でこの駕籠に乗り込んだっきり、死んでゴネてるんだ。しかも、その駕籠の中にこの印籠が落ちてたんだから、誰でも江戸錦が犯人だと思うのは不思議じゃねえじゃねえか」

原文 (会話文抽出)

「おきのどくだが、今度はお先にご無礼したな。何もかもめぼしがついてしまったから、てがらはこっちへちょうだいするぜ」
「とおっしゃいますと、なんでござりまするか、あの一番が遺恨相撲であったことも、それなる江戸錦がこの秀の浦の下手人であるということも、すっかり眼がついたというのでござりますな」
「あたりめえだ。眼がついたからこそ、こうしてきさまにも拝ませに連れてきたんじゃねえか」
「でも、ちょっと不思議じゃござんせぬか」
「何が不思議だ」
「遺恨を仕掛けられたものこそ江戸錦のほうなんだから、その江戸錦が秀の浦をあやめるたあ、ちっと筋が通らないように思いますがね」
「だって、こういうれっきとした証拠がありゃ、しかたがねえじゃねえか」
「ほほう、りっぱな印籠のようだが、どこかに江戸錦の持ち物だっていう目じるしでもござんすかな」
「そのでかい字が読めねえのか、印籠の表に、ひいきより江戸錦へ贈るっていう金泥流しの文字がちゃんと書いたるじゃねえか」
「なるほどね。この字が見えねえようじゃ、おれもあき盲にちげえねえや。そうするとなんですな、昔からよくある古い型だが、この印籠が秀の浦の死骸のそばにでも落っこちていたというんですな」
「いうまでもねえや。それも、ただのところに落っこちていたんじゃねえんだ。この江戸錦の野郎をいくら締め上げても、知らぬ存ぜぬと言い張って遺恨相撲の子細をぬかしゃがらねえから、それなら秀の浦とふたりを突き合わして白状さしてやろうと、こやつめをしょっぴきながら秀の浦のあとを追っかけていったら、かわいそうに、四ツ谷見付の土手先でこの駕籠へはいったまま、あけに染まってゴネっているんだ。しかも、その駕籠の中にこの印籠が落っこちていたんだから、だれだって江戸錦が下手人と思うに不思議はねえじゃねえか」


青空文庫現代語化 Home リスト