GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『芋粥』
現代語化
「それはまた、珍しいことですね」
「それもただおっしゃるだけじゃないんです。とても怖そうにお震えになって、『遅れてはだめだ。遅れたら、私が殿のご勘当を受けることになるんだ』って、ずっと泣いておられるんです」
「それで、それからどうしたんですか?」
「それから、すぐに寝てしまわれて。私たちが出てくる時でも、まだ目が覚めていないようでした」
「どうなっているんでしょうか」
「利仁さんのところには、動物も出仕するんですって」
「まったく驚きですね」
原文 (会話文抽出)
「さればでございまする。夜前、戌時ばかりに、奥方が俄に、人心地をお失ひなされましてな。『おのれは、阪本の狐ぢや。今日、殿の仰せられた事を、言伝てせうほどに、近う寄つて、よう聞きやれ。』と、かう仰有るのでございまする。さて、一同がお前に参りますると、奥方の仰せられまするには、『殿は唯今俄に客人を具して、下られようとする所ぢや。明日巳時頃、高島の辺まで、男どもを迎ひに遺はし、それに鞍置馬二疋牽かせて参れ。』と、かう御意遊ばすのでございまする。」
「それは、又、稀有な事でござるのう。」
「それも唯、仰せられるのではございませぬ。さも、恐ろしさうに、わなわなとお震へになりましてな、『遅れまいぞ。遅れれば、おのれが、殿の御勘当をうけねばならぬ。』と、しつきりなしに、お泣きになるのでございまする。」
「して、それから、如何した。」
「それから、多愛なく、お休みになりましてな。手前共の出て参りまする時にも、まだ、お眼覚にはならぬやうで、ございました。」
「如何でござるな。」
「利仁には、獣も使はれ申すわ。」
「何とも驚き入る外は、ござらぬのう。」