GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「今まで3年間、誰にも申しませんでしたが、旦那様だから申します。実は、私の廓に身を売ったのは、人様のように、親のためや、恩を受けた主人のためではありません。もともと生まれ落ちた時から両親がいない子でございましたのを、ある親切な方に拾われて成人しましたが、人の噂に、廓は女にとって一番の苦界と聞きましたので、好き好んで自らの身をその苦界に沈めたのです」
「それはまた珍しい話ですが、どうしてまた苦界と知って、自らの身を沈められたのですか」
「廓は女の貞操が一番安いところと聞きましたので、その安い廓でどのくらいまで女の貞操を清く高く守り通せるか試すためでした。ですから、達磨大師の、面壁九年に倣って、私も貞操を守るための修行をしようと、仲間から軽蔑されるほど、そのような変わったものの姿を身の回りにつけていましたが、お恥ずかしいことです……ついこの清さんばかりには心からほだされて、守りの帯も解いてしまいました。――でも、この家の主さん以外には、百万石を積まれても決して靡いた殿御はおりません。身請けされた仙次さんなどは言うまでもなく、1つの家に10日あまり暮らしていても、指1つ触れさせずに、主さんに差し上げたこの肌は守り通しています」
原文 (会話文抽出)
「そうそう、聞こうと思ってつい忘れていたが、あんたはまたなんで、あんなに達磨なんかがお好きじゃった」
「今まで三年ごし、どなたにも申しませんだが、だんなさまだから申します。実は、わちきのくるわへ身を売りましたのは、人さまのように、親のためや、恩をうけた主人のためではござりませぬ。もともと生まれおちるからの親なし子でござりましたのを、さるご親切なおかたさまに拾われて成人しましたが、人のうわさに、くるわはおなごにいちばんの苦界と聞きましたゆえ、すき好んでわれとわが身をその苦界に沈めたのでござります」
「それはまた珍しい話を聞くものじゃが、どうしてまた苦界と知って、われとわが身をお沈めなさったのじゃ」
「くるわはおなごの操のいちばん安いところと聞きましたゆえ、その安いくるわでどのくらいまでおなごの操を清く高く守り通されるかためすためでござりました。さればこそ、達磨大師の、面壁九年になぞらえて、わちきも操を守るための修業をしようと、朋輩からさげすまれるほど、あのようなひょうげたものの姿を身のまわりにつけていましたが、お恥ずかしゅうござります……ついここの清さんばかりには心からほだされまして、守りの帯も解いてしまいました。――でも、ここの主さんをのぞいては、百万石を積まれてもだれひとりなびいた殿御はござりませぬ。身請けされた仙次さんなぞはいうまでもないこと、一つ家に十日あまり暮らしていても、指一つふれさせないで、主さんにさし上げたこのはだは守り通してござります」