佐々木味津三 『右門捕物帖』 「亭主はいるか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「亭主はいるか」
「はい、ここに1人おります」
「1人いれば十分だ。きみが看板主の久庵か」
「はい、その通りです」
「でも、目が見えるな」
「目が見えるから按摩ができないという決まりでもあるんですか」
「生意気な口を利くな。俺は八丁堀の者だ。隠蔽すると身のためにならないから、よく聞いておけ」
「あ、そうでしたか。つい見損ないまして、失礼な口をききました。たまに針の打ち間違いはありますが、嘘と屁理屈は言わないのが私の身上でございますので、旦那がたのお尋ねであれば、地獄の話でもいたします」
「言う前から地獄の話などと申して、もう嘘の皮が剥がれるじゃないか。見た目は真面目そうに見えるが、なかなかきみはとんちんかんな奴だな」
「はい、その通りです。それも私の身上でございますから、よく町内の茶番狂言に呼ばれます」
「お座敷商売の按摩だけあって、口が上手い奴だな。では、尋ねるとしようか。そこの2つ目の小路に、この頃吉原から根引きされた囲い者がいることを存じておるだろうな」
「はい、よく存じております。ムッチリとした小太りで、なかなか揉みごたえがありますよ」
「やっぱりそうか。睨んだ通りだったな」
「え? 睨んだ通りとおっしゃいますと、どこかで旦那は、私があの家に出入りすること、お聞きになったんですか」
「廓上がりの女は、どうしたものか女按摩より男按摩を好むと聞いていたから、きみ家の表に吉田久庵と男名があったのをみつけて、ちょっと尋ねに来たのじゃ」
「さすがはお目が高い、おっしゃるとおりでございますよ。この界隈を縄張りにしている女按摩がおりますのに、ご用といえばいつもこの老いぼれをお呼びですから、男は死ぬまで廃れないとみえますよ」
「無駄口を叩くには及ばない。家族は幾人いる」
「2人と1匹でございます」
「1匹とは何だ」
「ワン公でございます。それもよく吠える――」
「亭主は何歳ぐらいだ」
「45、6の脂ぎった野郎――と申しちゃ申し訳ありませんが、人ごとながら、あんな美人に嫌らしいくらいな、イヤな男ですよ」
「商売は何だ」
「上方の絹問屋とか申しましたが」

原文 (会話文抽出)

「亭主はいるか」
「へえい、ここにひとりおります」
「ひとりおればたくさんだ。きさまが看板主の久庵か」
「へえい、さようで」
「でも、目があいているな」
「目あきじゃ按摩をしてならぬというご法度でもあるんですか」
「へらず口をたたくやつじゃな。わしは八丁堀の者じゃ。隠しだてをすると身のためにならぬから、よく心して申すがよいぞ」
「あッ、そうでござんしたか。ついお見それ申しやして、とんだ口をききました。ときどき針の打ち違いはございますが、うそと千三つを申しあげないのがてまえの身上でございますので、だんながたのお尋ねならば、地獄の話でもいたします」
「いう下から地獄の話なぞと申して、もううその皮がはげるじゃないか。うち見たところ正直者らしゅうはあるが、なかなかきさまとんきょう者じゃな」
「へえい、さようで。それもてまえの身上でございますから、よく町内のお茶番狂言に呼ばれます」
「お座敷商売の按摩だけあって、口のうまいやつじゃ。では、相尋ぬるが、そこの二つめ小路に、このごろ吉原から根引きされた囲い者がいることを存じおるじゃろうな」
「へえい、よく存じおります。むっちりとした小太りで、なかなかもみでがございますよ」
「やっぱりそうか。にらんできたとおりじゃったな」
「え? にらんできたとおりとおっしゃいますと、どこかでだんなは、てまえがあの家へ出入りすること、お聞きなさったんでござんすか」
「くろうと上がりの女は、どういうものか女按摩より男按摩を好くと聞き及んでいたから、きさまの家の表に吉田久庵と男名があったのをみつけて、ちょっと尋ねに参ったのじゃ」
「さすがはお目が高い、おっしゃるとおりでござんすよ。このかいわいをなわ張りの女按摩がござんすのに、ご用といえばいつもこの老いぼれをお呼びですから、男は死ぬまですたりがないとみえますよ」
「むだ口をたたくに及ばぬ。家内は幾人じゃ」
「ふたりと一匹でございます」
「一匹とはなんじゃ」
「ワン公でございます。それもよくほえる――」
「亭主は何歳ぐらいじゃ」
「四十五、六のあぶらぎった野郎――と申しちゃすみませんが、人ごとながら、あんなべっぴんにゃくやしいくらいな、いやな男ですよ」
「商売はなんじゃ」
「上方の絹あきんどとか申しやしたがね」


青空文庫現代語化 Home リスト