佐々木味津三 『右門捕物帖』 「きさまも驚いたろうが、おれもちっとばかり…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「お前も驚いただろうが、俺も今回はちょっとばかり知恵を絞ったよ。何しろ、恐れ多い話だが、上様と伊豆様を一度になきものにしようとしてたんだからな」
「その通りだと思います。私も大体見当がついてましたが、察するにあの7人の奴らは、豊臣の残党なんじゃないでしょうか」
「さすがはお前だな。残党じゃないが、いずれも豊家恩顧の血を引いたやつらだ。あくまでも徳川に復讐しようという魂胆で、まずそれには、というところから伊豆様の御藩中へ先に巣を作り、巧みに所々をあの通りの猿回しとなって駆け回り、将軍家の日光社参の機会を探っていたというわけさ。ところが、伊豆様はさすが知恵者、早くも匂いでかぎ知ったと見えて、今度の日光社参だけは俺にさえ隠すほど絶対に内密を守り、ああやってコッソリと先にご帰藩もして、それから今晩のようにごく密々で上様を城中に迎え入れるつもりだったんだが、上手の手から水が漏れるというやつで、逆にそのおん密事を嗅ぎ取った奴があの7人組の他にもう1人あったものだから、それと知って猿回し達が久喜の宿でも会ったように、たちまち八方へ飛び、まず辻斬り事件が最初に起きたというわけさ」
「なるほどね。じゃ、揃いも揃って腕利きばかりの右腕を切り取ったっていうのも、ネタを割れば、いざ事が露見というときの用心に、前もって力をそいでおくつもりなんですね」
「その通り、その通り。何しろ、自分たちの仲間はたった7人しかいないんだからな。目抜きの使い方の肝心な腕切ってカタワにしておきゃ、雑兵連中の2、300は物の数じゃねえんだから、さすが真田幸村の息がかかった連中だけあって、しゃれたことを考えたもんだが、ところがそれが大笑いさ。生兵法は生兵法だけのことしかできねえと見えて、お前も嗅いだあの香の移り香を残しておいたことが、そもそもネタが割れた真の原因だよ」
「ちょっと待って下さいよ。だって、旦那はまだ、その香の持ち主を引っ捕らえたとも、捕えたとも聞きませんが、あの7人組の中に奴もいましたかい」
「いたとも、いたとも。真っ先に穴の中から出てきた、前髪のまだ若い奴がその香の持ち主で、辻斬りの犯人なんだよ。臆病者と見せかけて、その実は一刀流の達人、しかもかわいそうに、生まれつきの唖だ」

原文 (会話文抽出)

「きさまも驚いたろうが、おれもちっとばかり今度という今度は知恵を絞ったよ。なにしろ、恐れ多い話だが、上さまと伊豆さまを一時になきものにしようとしていたんだからな」
「大きにそうでがしょう。あっしもおおよその見当がつきやしたが、察するにあの七人のやつは、豊臣の残党じゃごわせんかい」
「さすがにきさまだけのことがあるな。残党じゃねえが、いずれも豊家恩顧の血を引いたやつばらさ。あくまでも徳川にふくしゅうしようっていう魂胆で、まずそれには、というところから伊豆さまのご藩中へ先に巣を造り、巧みに所所ほうぼうへあのとおりのさるまわしとなって駆けまわり、将軍家の日光ご社参の機会を探っていたというわけさ。ところが、伊豆様はさすがに知恵者、早くもにおいでかぎ知ったとみえて、今度の日光ご社参ばかりはこのおれにさえ隠すほど絶対にご内密を守り、ああやってこっそりとお先にご帰藩もして、それから今夜のようにごく密々で上さまを城中へお迎えするつもりだったんだが、じょうずの手から水が漏れるというやつで、あべこべにそのおん密事をかぎ取ったやつがあの七人組のほかにもうひとりあったものだから、それと知ってさるまわしたちが久喜の宿でも会ったように、たちまち八方へ飛び、まずつじ切り事件が最初に起きたというわけさ」
「なるほどね。じゃ、そろいもそろって腕っききばかりの右腕を切り取ったっていうのも、ねたを割りゃ、いざ事露見というときの用心に、まえもって力をそいでおくつもりなんですね」
「そのとおり、そのとおり。なにしろ、てめえたちの仲間はたった七人しきゃねえんだからな。目抜きのつかい手の肝心な腕切ってかたわにしておきゃ、雑兵ばらの二、三百は物の数じゃねえんだから、さすが真田幸村の息がかかった連中だけあって、しゃれたまねしたものだが、ところがそれが大笑いさ。なま兵法はなま兵法だけのことしかできねえとみえて、きさまもかいだあの香の移り香を残しておいたことが、そもそもねたの割れた真のもとだよ」
「ちょっと待ってくだせえよ。だって、だんなはまだ、その香の持ち主をひっくくったとも、捕えたとも聞きませんが、あの七人組の中にそやつもござんしたかい」
「いたとも、いたとも。まっさきに穴の中から出てきたあの前髪のまだ若いやつがその香の持ち主で、つじ切りの下手人なんだよ。おくびょう者と見せかけて、その実は一刀流の達人、しかもかわいそうに、生まれつきの唖さ」


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