佐々木味津三 『右門捕物帖』 「紙屋の亭主」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「紙屋のおっさん」
「おう」
「そこの店襲われたの何時頃だったんだ?」
「あー、9時前だったかな。ちょっと風邪気味で、いつもより早く寝て、ぐっすり寝てたら、いきなり雨戸がバキバキ音を立てて壊れたんだ。ハッと思って目ぇ覚ましたら、もうその時、野郎が枕元に立ってやがって」
「小っちゃい優男だったって聞くけど、そう?」
「へえ、怖くてハッキリ身長とかわかんねえけど、150cmくらいはあったと思うよ。いつもの覆面でさ。着物は派手な格子柄だったけど、やけに力強くてな。起き上がろうとしたら、いきなり片足で胸を踏んづけて、声も出ねえうちに、短刀でこう、左手の親指と人差し指だけ根本からスパッと切りやがって、サッと消えちまったんだ」
「なるほど。じゃ、佃煮屋の親父、そっちはどうだったんだ?」
「うちも手口は大体同じだけど、1つ変なのがあってさ。野郎の着物がびしょ濡れだったんだよ。しかもヘンなことに、着物の内側から松ヤニの臭いがプンプンしてて」

原文 (会話文抽出)

「紙屋の亭主」
「へえい」
「そちのところを襲ったのは、何どきごろじゃった」
「さよう、九ツ少しまえだったかと思いますがね、少しかぜけでございましたので、いつもより早寝をいたしまして、ぐっすり寝込んでいると、いきなり雨戸がばりばりとすさまじい音をたてて、破れましたからね。はっと思って目をあけてみると、もうそのとき、野郎があっしのまくらもとに来ていやがったんですよ」
「小がらのやさ男だったという話じゃが、そのとおりか」
「へえい、なにしろこわかったので、しかとした背たけはわかりませんでしたが、五尺の上は出ていなかったように思われますよ。お定まりのような覆面でしてね。着物は唐棧格子の荒いやつでしたが、だのに野郎とても怪力でござんしてな、あっしがはね起きようとしたら、やにわに片足で胸のところを踏んづけておきやがって、声もなにも出す暇がないうちに、短いわきざしでこのとおり、左手の親指と人さし指だけを二本根もとからすぱりと切りゃがって、すうと出てうせやがったんですよ」
「なるほどな。では、つくだに屋の主人、そちのほうはどんなもようじゃった」
「わたしのほうもだいたい手口が同じでございますが、ただ一つ妙なことには、どうしたことか、野郎の着物が水びたしにぐっしょりぬれていたんですがね。そのうえ妙なことには、たしかにぷんとその着物のうちに松やにのにおいがしみ込んでいたんですよ」


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