佐々木味津三 『右門捕物帖』 「ね、だんな! さ、啖呵ですよ! 啖呵です…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』

現代語化

「おいっ、おいらにおまかせ! いつものようにスッとする啖呵きかせてやるぜ。殿様から命が下ってっからな。やっぱ、右門じゃなきゃダメだって」
「え、マジかよ。おいらの言った通りに、昨日夜に出やがったんだ?」
「そーじゃねえの。言った通り、黒門町と本石町に現れやがって。しかも、本石町では2人も左手の人さし指と親指切られたんだってよ」
「そうか。だから黙ってらねえんだな。で、敬公はどうしたいんだ。どんな顔してやがった?」
「それがマジぶっ飛んでるのよ。自分の立場もわからねえで偉そうにして、バチ当たったってやつだな。野郎、昨日日本橋でさらわれちまったんだって」
「え、行方不明になったのか?」
「そーそー。昨日まだ日が暮れてなかったらしいけど、野郎はちょっとした辻斬りでも退治するつもりだったみたい。3人手下連れて日本橋の橋のたもとまで行ったんだけど、いきなりヘンな奴に当て身食らってぶっ倒れて、そのままどっかにさらわれちまったんだって」
「手下も一緒にさらわれたのか?」
「いや、それならまだマシだったんだけどよ。手下3人、親分が目の前でやられてんのになーんも手が出せなかったんだって」
「情けねえ野郎どもだな。そしたら、手下たちは今朝まで敬公が行方不明なのを隠してたんだな」
「そーそー。余計なこと言っておこられるのが怖かったんだってよ。だから、さっきおいら野郎どもにめちゃくちゃ啖呵きったんだ。普段から ろくでもないことばっか仕込ませてるから、いざって時にこんなダサいことしなきゃいけねえんだって」
「そっか。そしたら、殿様はすぐにおいらに出馬しろって?」
「そーじゃねえの。面倒なことやらしやがって、さぞ腹立つだろうけど、幕府の威信のために、さっさと敬四郎助け出してくれって、おいらにも頼んできたんだってよ」
「そっか、尻ぬぐいさせられて役不足だけど、幕府の威信とあるなら、かまわんよ。じゃあ、そろそろ行こっかな」
「じゃ、駕籠ですね?」
「いいや、いらないよ」
「だって、敬公、急がねえと逃げちゃうかもよ」
「おいらが睨んで指示してるんだから。命を取ろうとしてるなら、昨日日本橋で会った時に殺せばいいはず。わざわざ面倒かけてさらっていったってことは、どっか牢屋に閉じ込めてるだけさ。でも、てめえはちょっと遠回りしなきゃならねえから、駕籠1丁雇って、すぐ黒門町を調べろよ。おいらは本石町で待ってるからな。ちゃんと調べろよ」

原文 (会話文抽出)

「ね、だんな! さ、啖呵ですよ! 啖呵ですよ! いつものように、胸のすっきりするやつをきっておくんなせえよ。お奉行さまからご命令が下りましたぜ。やっぱり、右門でなくちゃだめだとおっしゃいましたぜ」
「えッ、じゃ、おれのいったところへ、ゆうべ出やあがったか」
「出やあがったどころの段じゃねえんですよ。おっしゃったとおり、黒門町と本石町と両方へ現われやがってね。それも、本石町のほうは、ふたりもまたゆうべと同じように左手の人さし指と親指を切られたというんですよ」
「そうか。だから、いわねえこっちゃねえんだ。それで、敬公はどうしたい。どんな顔をしていやがったい」
「そいつがほんとうにあきれるんですよ。身のほども知らねえまねをしやがったんで、こういうのをばちが当たったというんでしょうがね。野郎め、ゆうべ日本橋で、さらわれちまったというんですぜ」
「えッ、じゃ、行くえ知れずになったのか」
「そうなんですよ。そうなんですよ。なんでも、ゆうべまだ宵のうちだったそうですがね、野郎め、ただのつじ切りでも押えるような了見でいたんでしょう。手下を三人つれて日本橋の橋たもとまでやっていったらね、いきなりぽかぽかとおかしなやつに当て身を食わされて、ぐうと長くなってしまったところを、そのままどっかへさらわれていっちまったというんですよ」
「じゃ、手下もいっしょにさらわれたのか」
「いいえ、それならまだいいんですが、三人ともに、野郎どもめ、目の前で親分ののされちまうのをちゃんとながめていながら、手出しひとつできなかったっていうんですよ」
「うすみっともねえ野郎どもだな。じゃ、けさになるまで、手下たちぁ敬公のさらわれちまったことを、ひたかくしに隠していたんだな」
「ええ、そうなんですよ、そうなんですよ。うっかりしゃべっておこられちゃたいへんだと思って、隠していたというんですがね。だから、今あっしも野郎たちにさんざん啖呵をきってやったんですよ。ろくでもねえ親分が、平生ろくでもねえお仕込みをしやがるから、いざというとき、こんなぶざまなことしなきゃならねえんだってね、うんとこきおろしてやったんですよ」
「そうか。じゃ、お奉行さまはすぐとおれに出馬しろとおっしゃったんだな」
「おっしゃった段じゃねえんですよ。手数のかかることをしでかして、さぞかし腹がたつだろうが、お公儀の面目のために、早く敬四郎を救い出してやってくれと、あっしにまでもお頼みなすったんですよ」
「そうか、人のしりぬぐいをするなちっと役不足だが、お公儀の面目とあるなら、お出ましになってやろうよ。では、そろそろ出かけるかな」
「じゃ、駕籠ですね」
「いいや、いらねえよ」
「だって、敬公、急がねえとゴネってしまうかもしれませんぜ」
「おれがこうとにらんでのさしずじゃねえか。命までもとるんだったら、ゆうべ日本橋で出会ったときに、もう殺されていらあ。わざわざ手数をかけてさらっていったところを見ると、どっか穴倉にでもほうり込まれているにちげえねえよ。でも、おめえは少し遠道しなくちゃならねえからな、一丁だけ駕籠を雇って、すぐ黒門町のほうを洗ってきなよ。おれあ、本石町のほうで待っているからな。ぬからずに洗っておいでよ」


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