GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「ええ、そうですよ。そうなんですよ。お奉行さまがすぐにあなたを呼んでまいれとおっしゃいましたのでね、駆けだそうとしたら、門のところに敬だんなのお手下がおいでなさって、お使いならばおれんが今お組屋敷へ帰るところだから、ついでに伝えてやろうといいましたんで、ついうっかりとお頼みしたんですよ」
「よし、わかった、わかった。おめえが悪いんじゃねえ、人の善意を裏切るやつが悪いんだよ。あばたがあばたなら、手下も手下だが、それでご用向きはどんなことかい。お奉行さまからのお呼び出しというと、尋常一様の案件じゃなさそうだが、俺でなくちゃとでもおっしゃってるのかい」
「そうなんですよ、そうなんですよ。こりゃ右門でなくちゃ手に負えまいとおっしゃいましたのでね。すぐにまたこうしてお呼びに参ったんですが、ゆうべ2か所に変な押し込みがはいりましてね、変なものを盗み取られたという訴えがあったんですよ」
「なんだ、押し込みドロボーか。そんなもんなら、なにも俺がわざわざ出るにも当たらねえじゃねえか」
「いいえ、それがただの豆ドロボーや、小泥棒じゃねえんですよ。1か所は小石川の台町、1か所は方面違いの厩河岸ぎわですがね、その飛び離れたところへ、半刻と違わねえのに同一人らしい変な野郎が押し込みゃがってね、両方ともそこの主人の手の指を2本ずつ切り取っていったというんですよ」
「なに、手の指? なるほど、体についてる品をとられたとすると、品物がちっと変わってるな。じゃ、なにかい、ふたりともぐっすり寝ついてる時にでも、知らずに切り取られたというのかい」
「いいえ、床にこそはついていたが、はいってきたのをちゃんと知っていながら、相手の野郎がとても怪力なんで、どうもこうもしようのねえうちに、そろいもそろってふたりとも、左手の親指と人差し指を2本切り取られちまったというんだから、ちっとばかりおかしいじゃござんせんか。それも、厩河岸のほうは町人だから、相手の怪力に手も足も出なかったとて不思議もありますまいが、小石川の台町のほうは一刀流だかをよく使うりっぱな若侍だっていうんだからね。こいつあ俺だっても、どうしたって、旦那さんの畑だと思うんですがね」
「なるほどな。じゃ、なんだな、相手の野郎は大入道みたいなやつででもあったというんだな」
「ところが大違いですよ。見たところ5尺とねえ小男でね、そのうえ女みたいな色男だったというんだから、ご番所のみなさまがたもその怪力が不思議だ不思議だとご評定しなさっていらっしゃるんですがね」
「いかにもな。そうすると、俺もちっと手伝うかな」
「ちぇッ、ありがてえ。筋書きがこうおいでなさらなくちゃ、せっかくおれさまが雨に濡れながらここで立ってた甲斐がねえんだ。じゃ、また駕籠ですね」
「駕籠なんぞ遠くもねえのに、いらねえよ。いらねえよ。春雨に降られていくのも風情だから、そろそろお車でいこうじゃねえか」
「だって、あばたの野郎が、あのとおりお使いを横取りしたとわかりゃ、捨てておけねえじゃござんせんか」
「忘れっぽいやつだな。いったい、おめえは何度俺にその啖呵をきらせるんだい」
「どの啖呵ですい」
「わからねえのか。だてや酔狂で俺あご番所のおまんまをいただいてるんじゃねえんだよ。憚りながら、あばたの敬公なんかとは、ちっとできが違わあ」
「だって、あば芋のだんなも、今度しくじりゃ5回目だから、ただじゃ尻尾を巻けませんぜ」
「うるせえな。口が開いてるんで、しゃべってしようがねえから、キャンディーでも買ってしゃぶっていなよ」
原文 (会話文抽出)
「わかったよ、わかったよ。おめえがあんまり人を信じすぎたので、ことづてが途中で消えたのだ。おそらく、頼んだ相手というのは、あばたの敬公の手下じゃねえのかい」
「ええ、そうですよ。そうなんですよ。お奉行さまがすぐにあなたを呼んでまいれとおっしゃいましたのでね、駆けだそうとしたら、門のところに敬だんなのお手下がおいでなさって、ことづてならばおれんが今お組屋敷へ帰るところだから、ついでに伝えてやろうといいましたんで、ついうっかりとお頼みしたんですよ」
「よし、わかった、わかった。おめえが悪いんじゃねえ、人の仏心を裏切るやつが悪いんだよ。あばたがあばたなら、手下も手下だが、それでご用向きはどんなことかい。お奉行さまからのお呼び出しというと、尋常一様のあなじゃなさそうだが、おれでなくちゃとでもおっしゃっていられるのかい」
「そうなんですよ、そうなんですよ。こりゃ右門でなくちゃ手に負えまいとおっしゃいましたのでね。すぐにまたこうしてお呼びに参ったんですが、ゆうべ二ところへおかしな押し込みがはいりましてね、変なものを盗み取られたという訴えがあったんですよ」
「なんだ、押し込みどろぼうか。そんなものなら、なにもおれがわざわざ出るにも当たらねえじゃねえか」
「いいえ、それがただの豆どろぼうや、小ぬすっとじゃねえんですよ。一カ所は小石川の台町、一カ所は方面違いの厩河岸ぎわですがね、その飛び離れたところへ、半刻と違わねえのに同一人らしいおかしな野郎が押し込みゃがってね、両方ともそこの主人の手の指を二本ずつ切り取っていったというんですよ」
「なに、手の指? なるほど、からだについている品をとられたとすると、品物がちっと変わっているな。じゃ、なにかい、ふたりともぐっすり寝ついているときにでも、知らずに切りとられたというのかい」
「いいえ、床にこそはついていたが、はいってきたのをちゃんと知っていながら、相手の野郎がとても怪力なんで、どうもこうもしようのねえうちに、そろいもそろってふたりとも、左手の親指と人差し指を二本切りとられちまったというんだから、ちっとばかりおかしいじゃござんせんか。それも、厩河岸のほうは町人だから、相手の怪力に手も足も出なかったとて不思議もありますまいが、小石川の台町のほうは一刀流だかをよく使うりっぱな若侍だっていうんだからね。こいつああっしだっても、どうしたって、だんなの畑だと思うんですがね」
「なるほどな。じゃ、なんだな、相手の野郎は大入道みたいなやつででもあったというんだな」
「ところが大違いですよ。みたところ五尺とねえ小男でね、そのうえ女みたいな優男だったというんだから、ご番所のみなさまがたもその怪力っていうのが不思議だ不思議だとご評定しなさっていらっしゃるんですがね」
「いかさまな。そうするてえと、おれもちっとてつだうかな」
「ちぇッ、ありがてえ。筋書きがこうおいでなさらなくちゃ、せっかくおれさまが雨にぬれながらここでつっ立っていたかいがねえんだ。じゃ、また駕籠ですね」
「駕籠なんぞ遠くもねえのに、いらねえよ。いらねえよ。春雨に降られていくのもおつだから、そろそろおひろいで行こうじゃねえか」
「だって、あばたの野郎が、あのとおりことづてを横取りしたとわかりゃ、捨てておけねえじゃござんせんか」
「忘れっぽいやつだな。いったい、おめえは何度おれにその啖呵をきらせるんだい」
「どの啖呵ですい」
「わからねえのか。だてや酔狂でおれあご番所のおまんまをいただいているんじゃねえんだよ。はばかりながら、あばたの敬公なんかとは、ちっとできが違わあ」
「だって、あば芋のだんなも、今度しくじりゃ五へんめだから、ただじゃしっぽを巻きませんぜ」
「うるせえな。口があいていると、しゃべってしようがねえから、あめチョコでも買ってしゃぶっていなよ」