GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 佐々木味津三 『右門捕物帖』
現代語化
「えッ!」
「隠さいでもいい。十年くらいにはなりそうだが、昔はヤットウをやったものだな」
「ご、ご冗談ばっかり――このとおりの見かけ倒しなただの古道具屋めにがります……」
「でも、道具屋にしては私を見損なったな、新人か」
「えへへへ……そういう見間違いが時々ございますので、とんでもない偽物を掴まされることがございます……」
「ウハハハハハハ」
「不意に私が変なことを言ったので、きみ、がたがたと、いまだに震えてるな。なに、心配しなくていいよ。ときに、きみのところで金の大黒さまとかが紛失したそうじゃってのう」
「あっ。その件でお越しくださいましたか。遠路のところ、わざわざありがとうございます。実は、それが、そのいかにも不思議でござりましてな。あのお大黒さまは、私が命をかけても大事なものなので、神棚にお祀り申し上げ、朝晩朝晩欠かさずにお供物も進ぜるほどの信心をしてござりましたが、さよう、まさしく一昨日のことでござります。朝お茶を進ぜようと存じまして、ひょいと神棚を見ますると、不思議なことに、それが紛失しているのでございますよ。ところが、もっと奇妙なことには、つい目と鼻の先のかどの三河屋でございますが、あの質屋の神棚に、その日から寸分違わぬ大黒さまがちゃんとのっかってるんですのでな、私はもうてっきりうちのものと存じまして、さっそく掛け合いに参りますると――」
「わかった、わかった。もうわかってる。そのことでおまえたちがいがみ合ってることを聞いたから来たのじゃが、いったいそのお大黒さまはどんな品じゃ」
「正真正銘金無垢のお大黒さまでござります」
「金無垢とのう。すると、なんじゃな、いずれは小さい品じゃな」
「へえい。実はその小さいのが自慢で大の自慢で、まず小豆粒ほどの大きさででもござりましたろうか。ところが、その豆大黒さまには、ちゃんと見事な目鼻も俵もついてございますのでな。どうしたって、そんな珍しい上出来のお大黒さまなんてものは、たとえこの江戸が百里四方あったにしても、二つとある品じゃないんです。しかるに、それが――」
「わかった、わかった。あとは言わなくてもわかってると申すに! ところで、その豆大黒はどこへ祀ってあった」
「ここでございます」
原文 (会話文抽出)
「おやじ! おまえのその右小手の刀傷はだいぶ古いな」
「えッ!」
「隠さいでもいい。十年ぐらいにはなりそうだが、昔はヤットウをやったものだな」
「ご、ご冗談ばっかり――このとおりの見かけ倒しなただの古道具屋めにござります……」
「でも、道具屋にしてはわしを見そこなったな、新まいか」
「えへへへ……そういう目きき違いがおりおりございますので、とんだいかものをつかませられることがございます……」
「ウハハハハハハ」
「不意にわしがおかしなことをいったので、きさま、がたがたと、いまだに震えているな。なに、心配せいでもいいよ。ときに、きさまのところで金のお大黒さまとかが紛失したそうじゃってのう」
「あっ。その件でお越しくださりましたか。遠路のところ、わざわざありがとうございます。実は、それが、そのいかにも不思議でござりましてな。あのお大黒さまは、てまえが、命にかけてもたいせつな品でござりますので、神だなにおまつり申しあげ、朝晩朝晩欠かさずにお供物も進ぜるほどの信心をしてござりましたが、さよう、まさしく一昨日のことでござります。朝お茶を進ぜようと存じまして、ひょいと神だなを見ますると、不思議なことに、それが紛失しているのでございますよ。ところが、もっと奇妙なことには、つい目と鼻の先のあのかどの三河屋でございますが、あの質屋の神だなに、その日から寸分たがわぬ大黒さまがちゃんとのっかってござりますのでな、てまえはもうてっきり家のものと存じまして、さっそく掛け合いに参りますると――」
「わかった、わかった。もうわかってる。そのことでおまえたちがいがみ合っていることを聞いたから参ったのじゃが、いったいそのお大黒さまはどんな品じゃ」
「正真正銘金無垢のお大黒さまでござります」
「金無垢とのう。すると、なんじゃな、いずれは小さい品じゃな」
「へえい。実はその小さいのが大の自慢で、まずあずき粒ほどの大きさででもござりましたろうか。ところが、その豆大黒さまには、ちゃんとみごとな目鼻も俵もついてございますのでな。どうしたって、そんな珍しい上できのお大黒さまなんてものは、たとえこの江戸が百里四方あったにしても、二つとある品じゃないのでござりますよ。しかるに、それが――」
「わかった、わかった。あとは言わいでもわかってると申すに! ところで、その豆大黒はどこへ祭ってあった」
「ここでござります」