GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 夢野久作 『あやかしの鼓』
現代語化
「私はこの話を聞いて腹が立ちました。大したこともないただの鼓が人の一生をダメにするような音を出せるなんてありえない。鼓ってのはその人の気持ちによって、いろんな音色を出すものなんだから、鼓の音で人の心を自由にするもんなんです。なんとかしてその鼓を打ってみたい。そうして人を呪うような音色じゃなくて、普通の楽しい調子を打ち出して、若先生の仇を取ってやりたいと思ってたら、伯母が私を呼び寄せたんです。私はチャンスだと思って勉強をやめてこの家へ来ました」
「……で……その鼓を打ったんですか?」
「その鼓ってどんな感じなんですか?」
「僕はまだその鼓を見てないんです」
「え……まだですか?」
「はい。伯母が僕から隠して、どうしても見せないんです」
「それはなぜですか?」
「伯母は若先生が打った『アヤカシの鼓』の音を聞いてから、自分でもその音を出したくなったんです。そうして音が出るようになったらそれを持ち出して、高林家の女弟子たちに自慢してやろうと思ってるんです。だからそれ以来高林へも行かないんです」
「じゃあなんであなたから隠すんですか?」
原文 (会話文抽出)
「それからあなたは……どうなさいましたか」
「私はこの事をきくと腹が立ちました。高の知れた鼓一梃が人の一生を葬るような音を立てるなんて怪しからぬ。鼓というものはその人の気持ちによって、いろんな音色を出すもので、鼓の音が人の心を自由にするもんじゃない。どうかしてその鼓を打って見たい。そうしてそのような人を呪うような音色でなく当り前の愉快な調子を打ち出して、若先生の讐を取りたいものだと思っている矢先へ伯母が私を呼び寄せたのです。私は得たり賢しで勉強をやめて此家に来ました」
「……で……その鼓をお打ちになりましたか」
「その鼓はどんな恰好でしたか」
「僕はまだその鼓を見ないのです」
「エッ……まだ」
「エエ。伯母が僕に隠してどうしても見せないんです」
「それは何故ですか」
「伯母は若先生が打たれた『あやかしの鼓』の音をきいてから、自分でもその音が出したくなったのです。そうして音が出るようになったら、それを持ち出して高林家の婦人弟子仲間に見せびらかしてやろうと思っているのです。ですからそれ以来高林へ行かないのです」
「じゃ何故あなたに隠されるのですか」