夢野久作 『あやかしの鼓』 「承知しました。お眼にかけましょう」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夢野久作 『あやかしの鼓』

現代語化

「わかりました。お見せしましょう」
「え、見せてくれるんですか?」
「でも今日はだめですよ」
「いつでも大丈夫です」
「その前に、お尋ねしたいことがあります」
「はい……なんでも」
「あなたって、もしかして音丸さんって苗字ですか?」
「……どうして……それをご存じで……」
「しかたありません。正直に言います。あなたのお家の若先生から聞きました。私は若先生に稽古してもらったことがあるんですが……」
「……若先生は伯母からあの鼓のことを聞かれたんです。あの鼓は飾り物でお飾りで、本当に音はでないってある職人が言ったけど、本当かどうか確かめてほしいって。そしたら若先生は……まぁ、とにかく打ってみないとわからないけど、とりあえず見に行ってみようということになって……7年前の今日なんです……この家へ来られてその鼓を打たれたんです。それからこの家を出られたんですけど、そのまま九段にも帰られなかったそうです」
「若先生って生きてるんですか?」
「……この鼓に呪われて……生きた屍みたいになって……でもそれをすごく恥じて……自分を知ってる人に会わないようにどこかへ……身を隠されてるそうです」
「なんでそんなことがわかるんですか?」
「……私は若先生にお会いしたんです……このことだけ私に話して行かれたんです。それと……私の跡継ぎにはやっぱり音丸って子供ができるって……」

原文 (会話文抽出)

「承知しました。お眼にかけましょう」
「エッ見せて下さいますか」
「けれども今日は駄目ですよ」
「いつでも結構です」
「その前にお尋ねしたいことがあります」
「ハイ……何でも」
「あなたはもしや音丸という御苗字ではありませんか」
「……どうして……それを……」
「しかたがありません。私は本当のことを云います。あなたのお家の若先生から聞きました。私は若先生にお稽古を願ったものですが……」
「……若先生は伯母からあの鼓のことを聞かれたのです。あの鼓はほんのお飾りでホントの調子は出ないものだと或る職人が云ったが、本当でしょうかってね。そうすると若先生は……サア……それを打って見なければわからぬが、とにかく見ましょうということになってね……七年前のしかもきょうなんです……この家へ来られてその鼓を打たれたんです。それからこの家を出られたのですがそのまんま九段へも帰られないのだそうです」
「若先生は生きておられるのですか」
「……この鼓に呪われて……生きた死骸とおんなじになって……しかしそれを深く恥じながら……自分を知っているものに会わないようにどこにか……姿をかくしておられます」
「あなたはどうしてそれがおわかりになりますか」
「……私は若先生にお眼にかかりました……私にこの事だけ云って行かれたのです。そうして……私の後継ぎにはやはり音丸という子供が来ると……」


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