夢野久作 『あやかしの鼓』 「お前はなぜ鼓の調子を出さないのだえ。いい…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 夢野久作 『あやかしの鼓』

現代語化

「お前、なんで鼓の音ださないの? いい音出るのに調子紙貼ったり剥がしたりして音を消してんの。何であんなことしてんの?」
「好きな音がでないんです。どの鼓も全部響き過ぎちゃって」
「フーン」
「じゃどんな音が欲しいの?」
「どの鼓もポンポンポンって『ン』って音がするから嫌なんです。ポンポンの『ン』の音のしない……ポ……ポ……ポ……って響かない……静かな音の鼓が欲しいんです」
「……フーム……おれの鼓はどうだ?」
「好きです。けどポオ……ポオ……ポオ……って音がします。その『オ』の音もでない方がいいと思うんです」
「先生」
「鶴原家にすごい鼓があると聞いたんですけど、借りたらダメですか?」
「ダメダメ」
「あの鼓出すとあの家に悪いことが起こるって言うじゃん。たとえウソでも他人に悪いこと起こることを願うなんてダメだよな。いいか。気に入った鼓がなければ一生舞台にでない覚悟だ」
「アヤカシの鼓」

原文 (会話文抽出)

「お前はなぜ鼓の調子を出さないのだえ。いい音が出せるのに調子紙を貼ったり剥がしたりして音色を消しているが、どうしてお前はあんなことをするのだえ」
「僕の好きな鼓がないんです。どの鼓もみんな鳴り過ぎるんです」
「フーン」
「じゃどんな音色が好きなんだ」
「どの鼓でもポンポンポンって『ン』の字をいうから嫌なんです。ポンポンの『ン』の字をいわない……ポ……ポ……ポ……という響のない……静かな音を出す鼓が欲しいんです」
「……フーム……おれの鼓はどうだえ」
「好きです僕は……。けれどもポオ……ポオ……ポオ……といいます。その『オ』の字も出ない方がいいと思うんです」
「先生」
「鶴原様のところに名高い鼓があるそうですが、あれを借りてはいけないでしょうか」
「飛んでもない」
「あの鼓を出すとあの家に不吉なことがあるというじゃないか。たとい嘘にしろ他人の家に災難があるようなことを望むものじゃないぞ。いいか。気に入った鼓がなければ生涯舞台に出ないまでのことだ」
「あやかしの鼓」


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