岡本綺堂 『半七捕物帳』 「お此は商売の小間物を日本橋の問屋へ仕入れ…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「お此って奴は商売の小間物を日本橋の問屋から仕入れに行くって理由で、時々江戸に来るんだって」
「昨日の朝も出かけたって言うし、三島屋の事件はお此で決まりっすよ」
「それから坂井屋のお糸さんの事件っすけど」
「お糸さんは先月の28日の夜からどこかに姿を消したらしいっす。建具屋の息子・伊之助を調べたら、職人のくせにビビり野郎で、何を聞いてもまともな答えをしなかったんだけど、脅しまくって白状させたところ、やっぱりお糸さんと関係があったんだって。そしたら、伊之助はいい男ぶって調子に乗ってたのに、お糸さんは黙って消えちゃったもんだから、伊之助もシュンとしてるらしいんだ……。いや、笑えるっすよ。お糸さんの相手は誰なんだか分かんないけど、黒船のマドロスにだまされて船に連れ込まれたんじゃないかって噂っす。小伊勢の巳之助がお糸さんの首を絞めた時に、暗闇から出てきて巳之助を殴った奴が、そのマドロスかも知れないんだって。こっちはもう手掛かりがなくて、どうにもならないっスけど……。オヤジさん、どうしますかね」
「お此は鮫洲の茶屋にも手伝いに行くらしいけど、坂井屋にも出入りしてんじゃねえか」
「出入りどころか、坂井屋には黒船の外人が大勢来て金を使うから、お此は商売そっちのけで毎日のように入り浸ってるって」
「そしたら、お糸さんとも仲良しだろうな」
「お糸さんの駆け落ちにもお此が関係してんじゃねえかって」
「そうかも知れねえ。ともかくお此を捕まえちまおうか」
「熊谷の旦那からも指示があったんだ。女一人に大勢の出動ってのもアレだけど、しくじって逃がしたりしたら旦那に怒られる。俺も一緒に行くわ」

原文 (会話文抽出)

「お此は商売の小間物を日本橋の問屋へ仕入れに行くと云って、ときどき江戸辺へ出かけるそうです」
「現にきのうも朝から出て行ったと云いますから、三島屋の一件は彼女に相違ありませんよ」
「それから坂井屋のお糸の一件ですがねえ」
「お糸は先月の二十八日の宵から何処かへ影を隠してしまったそうです。建具屋のせがれの伊之助を詮議すると、職人のくせに意気地のねえ野郎で、無闇におどおどしていて埒が明かねえのを、さんざん嚇し付けて白状させましたが、やっぱりお糸にかかり合いがあったのです。そこで、当人はいい色男ぶっていると、お糸は伊之助にだんまりで姿をかくしたので、色男も器量を下げてぼんやりしている……。いや、大笑いです。お糸の相手は誰か判らねえが、黒船のマドロスにだまされて、船へでも引っ張り込まれたのじゃあねえかという噂です。小伊勢の巳之助が狐と間違えてお糸の咽喉を絞めたときに、暗やみから出て来て巳之助をなぐり付けた奴は、そのマドロスかも知れませんよ。こうなると、わっしの方はもう種切れで、この上にどうにも仕様が無いようですが……。親分、どうしますかね」
「お此は鮫洲の茶屋へも手伝いに行くそうだが、坂井屋へも出這入りをするのだろうな」
「出這入りをする処か、坂井屋へは黒船の異人が大勢あつまって来て金ビラを切るので、お此は商売をそっちのけにして、この頃は毎日のように這入り込んでいるそうです」
「そうすると、お糸とも懇意だろう」
「お糸の駈け落ちにもお此が係り合っているのじゃあねえか」
「そうかも知れません。ともかくもお此を挙げてしまいましょうか」
「熊谷の旦那からもお指図があったのだ。女ひとりに大勢が出張るほどの事もあるめえが、もし仕損じて高飛びでもされると、旦那のお目玉だ。おれも一緒に行くとしよう」


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