岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分さん。大工の勝次郎がゆうべから帰らな…

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青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親分さん。大工の勝次郎が昨夜から帰ってないそうです」
「勝次郎が…。昨夜から…」
「そうです。昨夜も町内の師匠のところに行って、4時（午後10時）頃まで騒いで帰ったそうですが、今朝になっても家に帰ってないんです。どこか泊まりに行ったのかと思うんですが、長屋の人たちの話では、最近ほとんど家に泊まってるそうです」
「でも、若い者だし。どこに転がり込んだってわからない。まだ夜が明けたばかりだ。今にどこかから出てくるだろう」
「でも、親分。師匠の家から半町くらい離れたところに、勝次郎の煙草入れと草履が片方落ちてたそうです」
「そうか」
「それじゃ見過ごせませんね」

原文 (会話文抽出)

「親分さん。大工の勝次郎がゆうべから帰らないそうです」
「勝次郎が……。ゆうべから……」
「そうです。ゆうべも町内の師匠のところへ行って、四ツ（午後十時）頃まで呶鳴って帰ったそうですが、けさになっても家へ帰らないんです。どこへか泊まりに行ったのかと思うんですが、長屋の人たちの話では、この頃めったに家をあけたことはないそうです」
「それでも若い者のことだ。どこへ転げ込まねえとも限らねえ。まだ夜が明けたばかりだ。今にどこからか出て来るだろう」
「でも、親分。師匠のうちから半町ばかり離れたところに、勝次郎の煙草入れと草履が片足落ちていたそうです」
「そうか」
「そいつは打っちゃっては置かれねえ」

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