岡本綺堂 『半七捕物帳』 「妙なものとはなんだえ。まさか人間の首でも…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「妙なものってなんだよ。まさか人間の首じゃないだろうな」
「首じゃないけど、首に関係ないこともないんだけど…」
「私は見てないけど、白木の箱が出たらしいよ。犬がくわえてきたんだって。箱は雨ざらしになってたけど、そんなに古いもんじゃないみたいだったんだって」
「犬がくわえられるくらいだから、大きいやつじゃないだろうね」
「それでも長さは1尺くらいもある細長い箱で、なんだろうと思ってすぐに開けてみたら、中には藁人形が…。それはまあよくあることだけど、親分、これがすごいんだ。藁人形には小さなヘビが巻きついてて、そのヘビの体を太い竹釘で人形に打ちつけてある。ヘビはまだ生きてて、ビクビク動いてたんだって。さすがの中間どももキャーと言って、すぐにその箱を放り出したらしいよ。でも、肝の座った奴がいて、よくよく調べてみたら、またビックリ。なんと、ヘビだけでなく、人形のお腹にはヤモリが1匹、やっぱり釘づけになって生きてたんだ。よっぽど怨みのある奴がやったんだろうね」
「その後、その箱はどうなった?」
「中間たちも気持ち悪くなったんだろうね。『こんなもんは捨てちまえ』って言って、川に投げ捨てたんだって」

原文 (会話文抽出)

「妙なものとはなんだえ。まさか人間の首でもあるめえ」
「首じゃあありませんが、まんざら首に縁のねえこともねえんで……」
「わたしは見たわけじゃありませんが、なんでも白木の箱が出たそうですよ。その犬がくわえ出して来たんです。箱は雨露にさらされているが、そんな古いものじゃ無さそうだということでした」
「犬が啣えて来るくらいじゃあ大きなものではあるめえね」
「それでも長さは小一尺ほどもある細長い箱で、はて何だろうとすぐに打ち毀してみると、なかには藁人形……。それはまあ有りそうなことですが、ねえ、親分、凄いじゃあありませんか。藁人形には小さい蛇をまきつけて、その蛇のからだを太い竹釘で人形に打ちつけてある。蛇はまだ死なねえとみえて、びくびく動いている。さすがの中間共もわあっと云って、おもわずその箱をほうり出したそうですよ。それでも気の強い奴があって、よくよくあらためて見ると、また驚いた。というのは、蛇ばかりでなく、人形の腹には壁虎が一匹やっぱり釘づけになって生きている。よっぽど執念ぶかい奴の仕業に相違ありませんね」
「それから、その箱をどうした」
「中間たちも薄気味悪くなったんでしょう。こんなものはしょうがねえというんで、川へほうり込んでしまったそうですよ」


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