岡本綺堂 『半七捕物帳』 「親分。またひと騒ぎだ」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 岡本綺堂 『半七捕物帳』

現代語化

「親分。またひと騒動だ」
「なんだ。何が起きた?」
「米屋に泊まっている娘が見えなくなった」
「為吉の妹か?」
「そうです。お種という女です。昨日の夕方、といってもまだ午後5時頃、近所の銭湯へ行ったんですが、その帰りに姿が見えなくなったと言うんです。湯屋は1町ほど離れた山の湯という家で、番台のおかみさんの話では確かに帰って行ったと言うのですが、それきり米屋へは帰らない。そこでまた、大騒ぎになっているんです」
「仕方がないな」
「土地慣れていない者が1人で出歩くからいけない。だが、庄太。同じことを2度するものじゃないな。当然、人に感付かれるようになる」
「お前さんは感付きましたか?」
「ちょっと心に浮かんだことがある。この間米屋へ行った時に、俺の目に付いたのは藤助という奴だ。越後か信州者だろうが、米搗きにしてはお洒落な奴だ。あいつの身元や行状を調べてみろ」
「あいつが曲者ですか?」
「曲者とも決まらないが、なんだか気に食わない奴だ。あいつは道楽者違いない。まあ、調べてみろ」
「かしこまりました」
「もう1人、あの米屋の若い者に銀八という奴がいる。あいつも変だから気をつけろ。それから才はないだろうが、亀吉と相談して、新宿あたりの山女衒を調べてみろ。この頃宿場の女を売り込みに行った奴があるかもしれない」
「なるほど、わかりました」

原文 (会話文抽出)

「親分。またひと騒ぎだ」
「なんだ。なにが出来した」
「米屋に逗留している娘が見えなくなった」
「為吉の妹か」
「そうです。お種という女です。きのうの夕方、と云ってもまだ七ツ半(午後五時)頃、近所の銭湯へ行ったが、その帰りに姿が見えなくなったと云うのです。湯屋は一町ほど距れている山の湯という家で、番台のかみさんの話では確かに帰って行ったと云うのですが、それぎり米屋へは帰らない。そこで又、大騒ぎになっているのです」
「仕様がねえな」
「土地馴れねえ者が独りで出歩くからいけねえ。だが、庄太。同じことを二度するものじゃあねえな。自然に人に感付かれるようになる」
「お前さんは感付きましたかえ」
「少し胸に浮かんだことがある。このあいだ米屋へ行った時に、おれの眼についたのは藤助という奴だ。越後か信州者だろうが、米搗きにしちゃあ垢抜けのした野郎だ。あいつの身許や行状を洗ってみろ」
「あいつが曲者ですか」
「曲者とも決まらないが、なんだか気に喰わねえ野郎だ。あいつは道楽者に違げえねえ。まあ、調べてみろ」
「かしこまりました」
「もう一人、あの米屋の若い者に銀八という奴がいる。あいつも変だから気をつけろ。それから如才もあるめえが、亀吉とでも相談して、新宿あたりの山女衒をあさってみろ。このごろ宿場の玉を売り込みに行った奴があるかも知れねえ」
「成程、わかりました」


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