GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 岡本かの子 『富士』
現代語化
「この耐えられないほどの、激しい息切れと苦しい動悸。情けない気持ちになる。息を吸うと胸に枯れ枝かゴミみたいなものが詰まって、喉はイライラと虫が這ってるみたいに痒い。その不快感。咳、濁って汚れた咳。6つ7つと続けて出る。胸から喉にかけて意地悪に痩せ細って骨ばった手がねじり回してるみたい。辛い。私は顔をしかめる。思わず口を醜く開ける。さぞかし醜い顔をしてるだろう。この辛さと醜さを我慢してまで、いつまであの方は命を生きろっていうの?」
「こんなに痩せ細ってしまって、これからどうすればいいの。私はともかくこうして27歳まで生きたんだから、もう死んでもいいと思うんだけど。一日一日と醜く苦しませないで早く死なせてほしい。健康なときには希望も、楽しみも、恋もあったけど、病気になると何もない。死んだらどうなるのか私にはわからない。病気の苦しみから逃れるために死にたいだけよ」
「カエルの声が穴の中まで聞こえてくる。外は春なんだなあ。カエルたち、歌ってくれ歌ってくれ。私はあなたたちの歌に聞き惚れながら、いろんな思い出に浸るのが今1番の楽しみなの。死というものの状態に似てるらしい眠りにつくことが……」
原文 (会話文抽出)
「あの方は、いのち、いのちというが、ああ、いのちは、健康であるときにのみ有意義なのだ、この病める姿の醜さ。昼も夜もそのための尽きぬ嘆きに、ああ、わたしは、わたしに残れる僅かないのちの重味にさえ堪え兼ねている」
「この堪えられない程、烈しい息切れと、苦しい動悸のする身体。つくづく情無さを感ずる。呼吸を吸い込むと胸の中に枯枝か屑のようなものがつかえ、咽喉はいらいらと虫けらが這うように痒い。その不快さ。咳、濁って煤けた咳。六つも七つも続けさまに出る。胸から咽喉へかけて意地悪い痩せこけて骨張った手が捏ねくり廻しているようだ。辛い。わたしは顔をしかめる。思わず口を醜く開く。さぞ醜いさまだろう。この辛さ醜くさを続けてまで、いつまであの方はいのちを担って行けといわれるのだろうか」
「こんなに痩せ細ってしまって、この先どうするのだろう。私はともかくこうして二十七まで生きたんだから、もう死んでもいいのだと思うのだが。一日々々と醜く苦しませないで早く死なせて貰いたい。丈夫な時には、希望も、歓楽も、恋もあったが、病気になってみれば何にもない。死ねばどうなるのか私はそれを知らない。病が苦しいから死のうと思うだけだ」
「蛙の声が穴の中まで聞えて来る。外は春なのだなあ。蛙よ、唄ってくれ唄ってくれ。私はお前の唄に聞き惚れつつ、さまざまな思い出の中に眠るのが今はたった一つの楽しみなのだ。死というものの状態に似ているらしい眠りに就くことが……」