GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 梶井基次郎 『闇の書』
現代語化
「今、あの道に人が出てきたでしょ。あれ、誰だかわかる? 昨日温泉に来てた女の子だよ」
「僕はここへ来るといつもあの道を眺めてるの。あそこを人が通っていくのを見るのが好きなんだ。あの道ってなんか不思議な道だと思う」
「何が不思議なのよ」
「どうだろうな、例えば遠くの人を望遠鏡で見るでしょ。すると遠くじゃわかんないその人の体つきとか表情とかが見えてきて、今その人が何を考えてるのかどんな気持ちになってるのかとかまでが望遠鏡の中に映るでしょう。それと一緒なんだよ。あの道を歩いてる人を見ると、ついそんなことを考えちゃうんだよね。あれは通る人の運命をさらけ出す道なんだ」
「見てよ。人がいなくなるとあの道ってすごく狭く見えるでしょ。人が通ってたことすらわかんない。あんな風にあの道は人を待ってるんだ」
原文 (会話文抽出)
「ちょっとあすこをご覧なさい」
「いまあの路へ人が出て来たでしょう。あれは誰だかわかりますか。昨夜湯へ来ていた娘ですよ」
「僕はここへ来るといつもあの路を眺めることにしているんです。あすこを人が通ってゆくのを見ているのです。僕はあの路を不思議な路だと思うんです」
「どんなふうに不思議なの」
「どんなふうにって、そうだな、たとえば遠くの人を望遠鏡で見るでしょう。すると遠くでわからなかったその人の身体つきや表情が見えて、その人がいまどんなことを考えているかどんな感情に支配されているかというようなことまでが眼鏡のなかへは入って来るでしょう。ちょうどそれと同じなんです。あの路を通っている人を見るとつい私はそんなことを考えるんです。あれは通る人の運命を暴露して見せる路だ」
「ご覧なさい。人がいなくなるとあの路はどれくらいの大きさに見えて人が通っていたかもわからなくなるでしょう。あんなふうにしてあの路は人を待ってるんだ」