GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『戯作三昧』
現代語化
「なるほど、進まなければ、すぐに押しつぶされてしまいます。するとまず一歩でも進む工夫が、肝心なようですな」
「さようで、それが何よりも肝心です」
「八犬伝は相変わらず、進捗は順調ですか?」
「いや、全然進まなくて困っています。これも古人には及ばないようです」
「先生がそんなことを言われると、困りますよ」
「困るのなら、私の方が誰よりも困っています。でもどうしても、これで行ける所まで行くしかありません。そう思って、私はこの頃八犬伝と討ち死にの覚悟をしました」
「たかが戯作だと思っても、そうはいかないことが多いのでね」
「それは私の絵も同じです。どうせ描き始めたからには、私も行ける所までは描き切りたいと思っています」
「お互いに討ち死ですね」
「でも絵の方はうらやましいですね。公儀のお咎めを受けるなんてことがないのは何よりも結構です」
「それはありませんが――先生の書かれるものも、そういう心配はないでしょう」
「いや、大いにありますよ」
原文 (会話文抽出)
「それは後生も恐ろしい。だから私どもは唯、古人と後生との間に挾まつて、身動きもならずに、押され押され進むのです。尤もこれは私どもばかりではありますまい。古人もさうだつたし、後生もさうでせう。」
「如何にも進まなければ、すぐに押し倒される。するとまづ一足でも進む工夫が、肝腎らしいやうですな。」
「さやう、それが何よりも肝腎です。」
「八犬伝は不相変、捗がお行きですか。」
「いや、一向捗どらんで仕方がありません。これも古人には及ばないやうです。」
「御老人がそんな事を云つては、困りますな。」
「困るのなら、私の方が誰よりも困つてゐます。併しどうしても、之で行ける所迄行くより外はない。さう思つて、私は此頃八犬伝と討死の覚悟をしました。」
「たかが戯作だと思つても、さうは行かない事が多いのでね。」
「それは私の絵でも同じ事です。どうせやり出したからには、私も行ける所までは行き切りたいと思つてゐます。」
「御互に討死ですかな。」
「しかし絵の方は羨ましいやうですな。公儀の御咎めを受けるなどと云ふ事がないのは何よりも結構です。」
「それはないが――御老人の書かれるものも、さう云ふ心配はありますまい。」
「いや、大にありますよ。」