芥川龍之介 『戯作三昧』 「今日は拝借した書物を御返却旁、御目にかけ…

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青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『戯作三昧』

現代語化

「今日は拝借した書物を返却するついでに、お見せしたいものがあって、お邪魔しました」
「お暇なら一つ見せてくださいませんか」
「おお、早速、拝見しましょう」
「こっちは寒山拾得図です。 voyez donc. 岩に寄り添って座り込んだ寒山と拾得、それと、林梢に群がっている乱れ鴉と、――画面のどこを眺めても、うそ寒い秋の気が動いていないところはない。<br /> 馬琴の目は、この淡彩の寒山拾得に落ちると、次第にやさしい潤いを帯びて輝き出した。<br />「いつもながら、素晴らしい出来ですね。私は王摩詰を思い出します。『食随二鳴磬一巣烏下、行踏二空林一落葉声』というところでしょう」
「これは昨日描き上げたのですが、私には気に入ったから、お爺さんさえよければ差し上げようと思って持って来ました」
「いえ、気に入ったと言っても、今まで描いたものの中ではという程度ですが――とても思う通りには、いつになっても、描けません」
「それはありがたい。いつもいただいてばかりで恐縮ですが」

原文 (会話文抽出)

「今日は拝借した書物を御返却旁、御目にかけたいものがあつて、参上しました。」
「嫉海禄餾悗膨未襪函?未靴討?Ρ召弔拭8?譴佗?ど瀛颪澆粒阿砲盪罎亡?い審┯┐蕕靴い發里鮖?弔討陲襦?<br />「御暇なら一つ御覧を願ひませうかな。」
「おお、早速、拝見しませう。」
「嫉海楼振淑海忙?心蕎陲魃?垢笋Δ法≪弔錣兇箸蕕靴??个靴覆?蕁∋罎涼罎粒┯┐鯣笋い童?擦拭3┐???箸靴人腓亮?髻?鷆瓩帆造防舛い董△修涼罎望犬鰊辰弔特名个垢詁鷽佑涼砲鯲?燭擦討陲襦N售屬忙兇弔討陲覯?葉と、林梢に群つてゐる乱鴉と、――画面のどこを眺めても、うそ寒い秋の気が動いてゐない所はない。<br /> 馬琴の眼は、この淡彩の寒山拾得に落ちると、次第にやさしい潤ひを帯びて輝き出した。<br />「何時もながら、結構な御出来ですな。私は王摩詰を思ひ出します。食随<small><sub>二</sub></small>鳴磬<small><sub>一</sub></small>巣烏下、行踏<small><sub>二</sub></small>空林<small><sub>一</sub></small>落葉声と云ふ所でせう。」
「これは昨日描き上げたのですが、私には気に入つたから、御老人さへよければ差上げようと思つて持つて来ました。」
「嫉海蓮Åい虜?寮弔ゐ?鯢錣任覆?蕁∨??気Δ砲?Ρ召弔拭?<br />「勿論気に入つたと云つても、今まで描いたものの中ではと云ふ位な所ですが――とても思ふ通りには、何時になつても、描けはしません。」
「それは有難い。何時も頂戴ばかりしてゐて恐縮ですが。」


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