国木田独歩 『運命論者』 「聞きましょうとも。僕が聴いてお差支えがな…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 国木田独歩 『運命論者』

現代語化

「聞きますよ。俺が聞いても問題なければ何でも話して下さい。」

「聞いてくれますか。じゃあ話しますよ。でも俺の運命の不思議な力に惑わされてると思って聞いて下さい。原因と結果の法則って言ってるなら、それでいいです。でもその原因と結果の展開が人の予想外すぎて、一人の若い男がめちゃくちゃ苦しんでる事実をあんたが知ったら、俺が不思議な運命の力だと思っても無理はないってわかってくれると思いますよ。で、あんたに聞きますけど、ここに一人の男がいて、その男が何気なく道を歩いてたら、どこからともなく石が飛んで来て頭に当たって、即死する。それでその男の家族は飢え死にしそうになって、それで母親と子供がけんかして、そのせいで親子の間で血が出るような悲惨なことが起こるっていうことがこの世にあり得ると思いますか。」

「実際に起こったのかは知らないけど、あり得ることだとは思いますよ。」

「ですよね。それならあんたは人の予想外の原因で、ちょっとしたきっかけで、とんでもない悲惨なことが人の身に降りかかってくるっていう事実を認めてるわけですね。俺の身に起こってることもまさにそんな感じで、ほとんど信じられないような不思議な運命が俺をもてあそんでるんです。俺は運命と言わざるを得ないんです。俺にはそれ以外に考えられないんで。」

原文 (会話文抽出)

「聞きましょうとも。僕が聴いてお差支えがなければ何事でも承たまわりましょう。」
「聴いて下さいますか。それならお話しましょう。けれども僕の運命の怪しき力に惑うて居る者ですから、其積で聴いて下さい。若し原因結果の理法と貴様が言うならそれでも可う御座います。たゞ其原因結果の発展が余りに人意の外に出て居て、其為に一人の若い男が無限の苦悩に沈んで居る事実を貴様が知りましたなら、それを僕が怪しき運命の力と思うのも無理の無いことだけは承知下さるだろうと思います、で貴様に聞きますが此処に一人の男があって、其男が何心なく途を歩いて居ると、何処からとも知れず一の石が飛んで来て其男の頭に命中り、即死する、そのために其男の妻子は餓に沈み、其為めに母と子は争い、其為に親子は血を流す程の惨劇を演ずるという事実が、此世に有り得ることと貴様は信ずるでしょうか。」
「実際有ることか無いことかは知りませんが、有り得ることとは信じます、それは。」
「そうでしょう、それなら貴様は人の意表に出た原因のために、ふとした原因のために、非常なる悲惨がやゝもすれば、人の頭上に落ちてくるという事実を認たむるのです、僕の身の上の如き、全たく其なので、殆んど信ず可からざる怪しい運命が僕を弄そんで居るのです。僕は運命と言います。僕にはそう外には信じられんですから。」


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