国木田独歩 『運命論者』 「けれども、実は其方が幸福なのです。僕の言…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 国木田独歩 『運命論者』

現代語化

「でも、実はあんたが幸せなんですよ。俺の言葉で言えば、あんたは運命に恵まれてる。あんたの言葉で言えば、俺は不幸な結果を背負ってる男ってこと。」

「じゃあ、これで失礼します。」

「ちょっと、ちょっと、怒ったの? 俺が言ったことで気に障ったならごめんね。つい自分で勝手に苦しんで、わけのわからないことばっかり考えちゃって、見境なくしゃべりまくったから。いや、こんなこと誰にも言ったことないんだけどさ。でもなんかあんたには言いたくなっちゃったんだよね。勝手な熱弁で笑われちゃうかもだけど。俺にはやっぱり運命が俺とあんたを引き合わせたような気がするんだ。不幸な男だと思って、もう少し話してよ、もう少し……」

「別に話すようなことないけど……」

「そう言わずに、ちょっとここで一緒にいてよ、もう少し……。あ! なんで俺ばっかりこんな無理ばっか言うんだろう! 酔ってるのかな。運命のせいだ、運命のせいだ、いいのいい、あんたに話すことがないなら俺が話すよ。俺が話すから聞いてよ、せめて聞いてよ、俺の不幸な運命を!」

原文 (会話文抽出)

「けれども、実は其方が幸福なのです。僕の言葉で言えば貴様は運命に祝福されて居る方、貴様の言葉で言えば僕は不幸な結果を身に受けて居る男です。」
「それでは此で失礼します。」
「ま、ま、貴様怒ったのですか。若し僕の言った事がお気に触ったら御勘弁を願います。つい其の自分で勝手に苦んで勝手に色々なことを、馬鹿な訳にも立たん事を考がえて居るもんですから、つい見境もなく饒舌のです。否、誰にも斯んなことを言った事はないのです。けれども何んだか貴様には言って見とう感じましたから遠慮もなく勝手な熱を吹いたので、貴様には笑われるかも知れませんが。僕にはやはり怪しの運命が僕と貴様を引着たように感ぜられるのです。不幸せな男と思って、もすこしお話し下さいませんか、もすこし……」
「けれども別にお話しするようなことも僕には有りませんが……」
「そう言わないで何卒もすこし此処に居て下さいな、もすこし……。噫! 如何して斯う僕は無理ばかり言うのでしょう! 酔たのでしょうか。運命です、運命です、可う御座います、貴様にお話がないなら僕が話します。僕が話すから聞いて下さい、せめて聴て下さい、僕の不幸な運命を!」


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