国木田独歩 『疲労』 「それとも呼ぼうか?」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 国木田独歩 『疲労』

現代語化

「それとも呼ぼうか?」
「まあ、そのほうがいいな。こっちが彼ばかりに頼ってるように思われるのはばかげてるからな」
「ちょっと」
「すぐ出してもらおう」
「それもそうだ、あの先生は利口だけどばかだから、こっちで騒ぐとすぐ値段を高くして、素直に承知することもわざとぐずったりするからね」
「それでいてこっちで少し強く出ると怒るんだ。始末が悪い」
「とにかく呼ぼうじゃないか」
「いつ呼ぼう?」
「今夜はどうだ。今呼んでも彼は宿にいないだろう」
「2時40分か。今はいないよ。でも」
「じゃあ明日の朝早くしよう。中西が来たとなれば、僕はこれから駿河台の大将に会っておくほうがいいと思う」
「なるほど、それはいい考えだ」
「それから今夜は沢田を呼んで、見本の説明の順番をちゃんと作ってもらおう」
「なるほど、それは大事だ。僕らだって中西が相手なら説明くらいはできるけど、沢田に任せたほうがいい。じゃあそれで決まりだ。これから手紙を持たせてやろう。電話じゃだめだよ。明日の午前8時までにお越しくださいって書いておこう」
「よし、手紙をすぐ持たせよう」
「中西の宿はみすぼらしいけど、よく我慢してるよね」
「常宿になると、居心地がいいんだろう」
「君、大将に会ったらあの件をなんとか決めてくれないと困ると言ってくれないか。大将は何かしなきゃって手間取ってるんだろうけど、それじゃ実際君の知ってる通り僕には無理なんだ。故郷の連中って、人に頼む時は騒いでるのに、うまくいくと見向きもしない。ばかにしてるんだ。だから大将に、どっちでもいいからダメとかできるとか、はっきり早く決めてほしいと言ってくれ。大将は人がいいから、頼むと何でもしなきゃって思うから大変なんだ。中に立ってるこっちはありがた迷惑だよ」
「これは不可思議だな。中西に手紙を書こうとすると、お蝶さんが来るなんて」
「あら、またそんなことおっしゃるの。中西さんなんてどうでもいいわ。ほんとうにいやらしい。みんな私をからかうんだから」
「いいわ、そんなことおっしゃるならこの手紙をどこかに捨ててしまうわ」
「いや、誤解だ。大切なお手紙だ。捨てられたら困る。源公にすぐ持たせてくれ。お蝶さんはいい子だ」
「蝶ちゃんはいい子だ。ついでに人車を」
「田浦さん、はげ自慢はよしましょう」

原文 (会話文抽出)

「それとも呼ぼうか?」
「まア、そのほうがいいな。こっちが彼奴ばかりに頼っているように思われるのは、ばかげているからな。」
「ちょっと」
「すぐ出さしておくれ。」
「それもそうだ、あの先生、りこうでいてばかだから、あまりこっちで騒ぐとすぐ高く止まって、素直に承知することもわざとぐずりたがるからね。」
「それでいてこっちで少し大きく出るとまたすぐおこるのだ。始末にいけない。」
「とにかく呼ぶとしようじゃアないか。」
「いつ呼ぼう?」
「今夜はどうだ。今呼んだって彼奴宿にいやアしない。」
「二時四十分か。今はとてもいない。しかし」
「あすの朝早くしようじゃアないか。中西が来たとなれば、僕はこれから駿河台の大将に会っておくほうがいいと思う。」
「なるほどそれはそのほうがいい。」
「それから今夜は沢田を呼んで、見本の説明の順序をよく作っておいてもらうことにする。」
「なるほど、そいつはなお大切だ。われわれだって中西が相手なら結構説明くらいはできるが、それは沢田に越した事はない。それじゃアそう決めた。これから手紙を持たしてやって、電話じゃアだめだよ、そして明朝午前八時までに御来車を仰ぐとでもしておこう。」
「よし、手紙をすぐ持たしてやろう」
「中西の宿はずいぶんしみったれているが、彼奴よく辛抱して取り換えないね。」
「常旅宿となると、やっぱり居ごこちがいいからサ」
「君、大将に会ったら例の一件をなんとか決めてもらわないと僕が非常に困ると言ってくれたまえ。大将はどうかして物にしてやろうというので手間取っているだろうが、それじゃア実際君の知ってるとおり僕がやりきれない、故郷のやつら、人にものを頼む時はわいわい言って騒ぐくせに、その事がうまくゆくと見向きもしないんだ。人をばかにしてやアがる。だから大将に、どちらでもいいからだめだとかできるとか、明白に早く決定を与えてもらいたいと言ってくれたまえ、大将あれでばかに人がいいから、頼むとなんでもかんでもそうしてやらなければならんと心得てるからやりきれない。中に立ってる者はありがた迷惑だ。」
「これは奇妙不思議だ、中西へ手紙をやろうとすると、お蝶さんがやって来る、争えんものだ、」
「アラまたあんな事をおッしゃる、中西さんなんかなんでもないワ、ほんとにあたしくやしいわ、みんなしてからかうんだもの」
「いいわ、そんな事をおッしゃるならこのお手紙をどっかへうっちゃってしまうから。」
「イヤあやまった、それは大切の手紙だ、うっちゃられてたまるものか、すぐ源公に持たしてやっておくれ。お蝶さんはいい子だ。」
「蝶ちゃんはいい子だ、ついでに人車を。」
「田浦さん、はげが自慢にゃなりませんよ」


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