国木田独歩 『二老人』 「何時でしょうか」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 国木田独歩 『二老人』

現代語化

「何時ですか?」
「3時半です」
「いや、それじゃもう行かなきゃならない」
「実は私、このごろある婦人会の集金係をしてるんですが、毎日毎日東京中を歩き回るので、この歳ではとてもやり切れません。それで少し楽な仕事をと頼んで歩きましたら、やっと良い口が見つかったんです。それは賄い一切向こう持ちで月給が7円だというんです。それで体を動かすことはあまりないというんですから、さっそくそれに決めたんです。ところが」
「私はとんでもないことをしてるんだ。つい足りなくて一円二円と使い込み、とうとう15円ほど会の集金を使い込んでしまったんです。さあ、それもちゃんと返して帳簿を整理しておかないと今の良い口に行くことができない。そこでこの4、5日その15円の調達にずいぶん駆け回りましたよ。やっと三十間堀の野口っていう旧友の息子が、返済の道さえ立てば貸してやろうってことで、きょう4時から5時の間に先方で会うことになってるんです。まあざっとこんな苦しいわけで……でも使い込みの件は、極内密にお願いします」

原文 (会話文抽出)

「何時でしょうか」
「三時半です」
「イヤそれじゃもう行かなきゃならん。」
「実はわたし、このごろある婦人会の集金係をしているのですから、毎日毎日東京じゅうをへめぐらされるので、この年ではとてもやり切れなくなりました、そこでも少し楽な仕事をと頼んで歩きましたら、やっとうまい口が発見ったんです。それは食扶持いっさいむこう持ちで月給が七円だというのです、それでからだを動かすことはあまりないというんですから、さっそくそれに決めたのです。ところが、」
「わたしは大変なことをしているんだ、とかく足らん足らんで一円二円とつかい込み、とうとう十五円ほど会の集金をつかい込んでしまったのです。サアそれもチャンと返して帳簿を整理しておかんと今のうまい口に行く事ができない。そこでこの四五日その十五円の調達にずいぶん駆け回りましたよ。やっと三十間堀の野口という旧友の倅が、返済の道さえ立てば貸してやろうという事になり、きょう四時から五時までの間に先方で会うことになっているのです。まアザッとこんな苦しいわけで……けれどつかい込みの一件は、ごく内密にお願いします」


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