GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『偸盗』
現代語化
「そしたら、お前は嫌われたんじゃないの?」
「愛人がいたって、俺が嫌われた証拠にはならないだろ。話を中断するなら、もうやめだ。」
「それから、おばあちゃんは愛人の子を産んだんだ。でも、それは別にどうでもいい。ただ、驚いたのは、その子を生んだ後、おばあちゃんが突然いなくなったことだ。人によると、疫病で死んだとか、筑紫へ行ったとか言ってる。後で聞いた話だけど、奈良坂の道標のところでしばらく過ごしていたらしい。でも、それからは急に、俺の人生が味気なくなってしまった。だから酒を飲んだり、賭け事もするようになった。ついには、人に誘われて強盗までやってしまった。綾を盗もうが錦を盗もうが、いつも思い出していたのは、おばあちゃんのことだけだった。それから十年、十五年経って、やっとまたおばあちゃんに会えたんだけど…」
原文 (会話文抽出)
「そのうちに、わしはおばばに情人がある事を知ったがな。」
「そんなら、おぬしはきらわれたのじゃないか。」
「情人があったとて、わしのきらわれたという、証拠にはならぬ。話の腰を折るなら、もうやめじゃ。」
「そのうちに、おばばがその情人の子をはらんだて。が、これはなんでもない。ただ、驚いたのは、その子を生むと、まもなく、おばばの行き方が、わからなくなって、しもうた事じゃ。人に聞けば、疫病で死んだの、筑紫へ下ったのと言いおるわ。あとで聞けば、なんの、奈良坂のしるべのもとへ、一時身を寄せておったげじゃ。が、わしは、それからにわかに、この世が味気なくなってしもうた。されば、酒も飲む、賭博も打つ。ついには、人に誘われて、まんまと強盗にさえ身をおとしたがな。綾を盗めば綾につけ、錦を盗めば、錦につけ、思い出すのは、ただ、おばばの事じゃ。それから十年たち、十五年たって、やっとまたおばばに、めぐり会ってみれば――」