芥川龍之介 『偸盗』 「されば、おぬしにきくがな、おぬしは、この…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『偸盗』

現代語化

「おい、聞いてくれ。お前は、俺を親だと思ってるのか? いや、思えるか?」
「別に聞くまでもないでしょ。」
「思えないよな。」
「うん、思えない。」
「それって勝手すぎるだろ。いいか、沙金はおばあちゃんの連れ子なんだ。でも、俺の子じゃない。だから、おばあちゃんが沙金を娘だと思ってるなら、お前も俺を親だと思わなきゃおかしいだろ。なのに、お前は俺を親とも思わない。思わないどころか、場合によっては殴り倒すかもしれない。そんなお前が、俺にだけ沙金を娘だって言えって、どういうことだよ。妻としてふさわしくないって、どういうことだよ。沙金と結婚する俺が畜生なら、親を殺そうとするお前だって畜生だろ。」
「どうだ? 俺が無理か、お前が無理か、お前にも分かるだろ。それに、俺とおばあちゃんは、俺が左兵衛府の下人をしていた頃からずっと知り合いなんだ。おばあちゃんが俺をどう思ってたかは知らないけど、俺はおばあちゃんのことが好きだったんだ。」

原文 (会話文抽出)

「されば、おぬしにきくがな、おぬしは、このわしを、親と思うか。いやさ、親と思う事ができるかよ。」
「きくまでもないわ。」
「できまいな」
「おお、できない。」
「それが手前勝手じゃ。よいか。沙金はおばばのつれ子じゃよ。が、わしの子ではない。されば、おばばにつれそうわしが、沙金を子じゃと思わねばならぬなら、沙金につれそうおぬしも、わしを親じゃと思わねばなるまいがな。それをおぬしは、わしを親とも思わぬ。思わぬどころか、場合によっては、打ち打擲もするではないか。そのおぬしが、わしにばかり、沙金を子と思えとは、どういうわけじゃ。妻にして悪いとは、どういうわけじゃ。沙金を妻にするわしが、畜生なら、親を殺そうとするおぬしも、畜生ではないか。」
「どうじゃ。わしが無理か、おぬしが無理か、いかなおぬしにも、このくらいな事はわかるであろう。それもわしとおばばとは、まだわしが、左兵衛府の下人をしておったころからの昔なじみじゃ。おばばが、わしをどう思うたか、それは知らぬ。が、わしはおばばを懸想していた。」


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