芥川龍之介 『偸盗』 「ああ、行ってもいい。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 芥川龍之介 『偸盗』

現代語化

「ああ、行ってもいいよ。」
「あんなもの見ちゃったから、気分悪いんだよ。」
「…平六の家って知ってるだろ? あそこからまっすぐ行って、立本寺の門を左に曲がると、藤堂さんの家があるんだ。あと少しだから、ついでに屋敷の周りも見てきてくれよ。今夜の下見だ。」
「最初からそうするつもりで出てきたんだよ。」
「そうか、それはお前らしいな。お前の兄貴じゃ、向こうに捕まえられちゃうかもしれないけど、お前なら大丈夫だ。」
「かわいそうに、兄貴もいつもおばあちゃんに言われて大変だな。」
「いや、俺は一番あの人を褒めてる方だよ。おじいさんなんて、お前には言えないようなこと言ってるんだから。」
「それは、あのことがあったからでしょ。」
「あったって、お前の悪口は言わないだろ。」
「じゃあ、多分俺は子供扱いされてるんだ。」

原文 (会話文抽出)

「ああ、行ってもいい。」
「あんなものを見たんで、すっかり気色がわるくなってしまったよ。」
「――ええと、平六の家は、お前さんも知っているだろう。これをまっすぐに行って、立本寺の門を左へ切れると、藤判官の屋敷がある。あの一町ばかり先さ。ついでだから、屋敷のまわりでもまわって、今夜の下見をしておおきよ。」
「なにわたしも、始めからそのつもりで、こっちへ出て来たのさ。」
「そうかえ、それはお前さんにしては、気がきいたね。お前さんのにいさんの御面相じゃ、一つ間違うと、向こうにけどられそうで、下見に行っても、もらえないが、お前さんなら、大丈夫だよ。」
「かわいそうに、兄きもおばばの口にかかっちゃ、かなわないね。」
「なに、わたしなんぞはいちばん、あの人の事をよく言っているほうさ。おじいさんなんぞと来たら、お前さんにも話せないような事を、言っているわね。」
「それは、あの事があるからさ。」
「あったって、お前さんの悪口は、言わないじゃないか。」
「じゃおおかた、わたしは子供扱いにされているんだろう。」


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