太宰治 『お伽草紙』 「せつかくおいで下さつても、おもてなしも出…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『お伽草紙』

現代語化

「せっかく来ていただいたのに、もてなしもできず申し訳ございません」
「せめて、雀の里のお土産として、この葛籠のどれでもお気に召したものをお持ち帰りくださいまし」
「いらないよ、そんなの」
「私の靴はどこですか」
「困ります。どれか一つ持ち帰ってくださいよ」
「あとで私は、お照さんに怒られます」
「怒りません。あの子は、決して怒りません。私は知ってます。ところで、靴はどこですか。汚い藁草履をはいてきたはずですが」
「捨てちゃいました。裸足で帰ったらいいですよ」
「それは、ひどい」
「それじゃあ、何か一つお土産を持って帰ってください。お願いします」
「どれも大きい。大きすぎる。私は荷物を持つのが嫌いなんです。懐に入るくらいの小さいお土産はありませんか」
「そんな無理言ってたって、――」
「じゃあ帰ります。裸足でも構わない。荷物はご免だ」
「ちょっと待って、ちょっと。お照さんに聞いてきます」
「はい、これは、お照さんの簪。お照さんを忘れないでくださいね。また来てくださいね」

原文 (会話文抽出)

「せつかくおいで下さつても、おもてなしも出来なくて恥かしう存じます。」
「せめて、雀の里のお土産のおしるしに、この葛籠のうちどれでもお気に召したものをお邪魔でございませうが、お持ち帰り下さいまし。」
「要らないよ、そんなもの。」
「おれの履物はどこにあります。」
「困りますわ。どれか一つ持つて帰つて下さいよ。」
「あとで私は、お照さんに怒られます。」
「怒りやしない。あの子は、決して怒りやしない。おれは知つてゐる。ところで、履物はどこにあります。きたない藁靴をはいて来た筈だが。」
「捨てちやひました。はだしでお帰りになるといいわ。」
「それは、ひどい。」
「それぢや、何か一つお土産を持つてお帰りになつてよ。後生、お願ひ。」
「みんな大きい。大きすぎる。おれは荷物を持つて歩くのは、きらひです。ふところにはひるくらゐの小さいお土産はありませんか。」
「そんなご無理をおつしやつたつて、――」
「そんなら帰る。はだしでもかまはない。荷物はごめんだ。」
「ちよつと待つて、ね、ちよつと。お照さんに聞いて来るわ。」
「はい、これは、お照さんの簪。お照さんを忘れないでね。またいらつしやい。」


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