太宰治 『お伽草紙』 「ひやあ!」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『お伽草紙』

現代語化

「ひえー!」
「水だ、水だ。これはまずい」
「うるさいわね。泥の舟なんだから、沈むに決まってるじゃない。わかんなかったの?」
「わからん。納得いかない。わけがわからん。それは無理ってもんだ。お前、まさか俺を、まさか、そんな鬼みたいな、いや、全然わからん。お前は俺の嫁さんじゃないか。やあ、沈む。少なくとも沈むってことは目の前の真実だ。冗談にしたって、やりすぎ。これはもう暴力だよ。やあ、沈む。おい、お前どうしてくれるんだよ。お弁当無駄になっちゃうじゃないか。このお弁当箱にはイタチのフンをまぶしたミミズのスパゲティなんて入ってるんだぞ。もったいないだろ。あっぷ! ああ、とうとう水を飲んじゃった。おい、頼むから、人を困らせる冗談はやめてくれよ。おいおい、そのロープを切るなよ。死んでも一緒、夫婦は一緒に、切っても切れない縁の綱、あ、ダメだ、切っちゃった。助けてくれ!俺、泳げないんだ。白状する。昔はちょっと泳げたけど、タヌキも37になると、あちこちの筋肉が固くなって、とても泳げやしないんだ。白状する。俺、37なんだ。お前とは歳の差がありすぎるんだ。年寄りを大事にしろ!敬老の精神を忘れるな!あっぷ! ああ、お前はいい子だな、いい子だから、お前が持ってるオールをこっちに出してくれ、それにつかまって、あいたた、何をするんだ、痛いじゃないか、オールで俺の頭を殴りやがって、よし、そうか、わかった!お前、俺を殺すんだな、それでわかった」
「あいたた、あいたた、ひどいじゃないか。俺、お前に何て悪いことしたんだ。惚れちまったのが悪いか」
「おお、汗だく」

原文 (会話文抽出)

「ひやあ!」
「水だ、水だ。これはいかん。」
「うるさいわね。泥の舟だもの、どうせ沈むわ。わからなかつたの?」
「わからん。理解に苦しむ。筋道が立たぬ。それは御無理といふものだ。お前はまさかこのおれを、いや、まさか、そんな鬼のやうな、いや、まるでわからん。お前はおれの女房ぢやないか。やあ、沈む。少くとも沈むといふ事だけは眼前の真実だ。冗談にしたつて、あくどすぎる。これはほとんど暴力だ。やあ、沈む。おい、お前どうしてくれるんだ。お弁当がむだになるぢやないか。このお弁当箱には鼬の糞でまぶした蚯蚓のマカロニなんか入つてゐるのだ。惜しいぢやないか。あつぷ! ああ、たうとう水を飲んぢやつた。おい、たのむ、ひとの悪い冗談はいい加減によせ。おいおい、その綱を切つちやいかん。死なばもろとも、夫婦は二世、切つても切れねえ縁の艫綱、あ、いけねえ、切つちやつた。助けてくれ! おれは泳ぎが出来ねえのだ。白状する。昔は少し泳げたのだが、狸も三十七になると、あちこちの筋が固くなつて、とても泳げやしないのだ。白状する。おれは三十七なんだ。お前とは実際、としが違ひすぎるのだ。年寄りを大事にしろ! 敬老の心掛けを忘れるな! あつぷ! ああ、お前はいい子だ、な、いい子だから、そのお前の持つてゐる櫂をこつちへ差しのべておくれ、おれはそれにつかまつて、あいたたた、何をするんだ、痛いぢやないか、櫂でおれの頭を殴りやがつて、よし、さうか、わかつた! お前はおれを殺す気だな、それでわかつた。」
「あいたたた、あいたたた、ひどいぢやないか。おれは、お前にどんな悪い事をしたのだ。惚れたが悪いか。」
「おお、ひどい汗。」


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