太宰治 『お伽草紙』 「わあ、どうも、いかん。淋しいわい。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『お伽草紙』

現代語化

「わあ、どうも、ダメだ。寂しいわ」
「なんのわけかわからないけど、どうも、ダメ。おい、亀。なんとか、また面白い悪口でも言ってくれ。お前から一言も喋らないじゃん」
「怒ってるのかね。俺が竜宮から食い逃げみたいに帰るの、お前は、怒ってるのかね」
「ひがんじゃいけない。陸のヤツはこれだからいやなんだよ。帰りたくなったら帰るよ。どうでも、あなたの気の向いたように、って最初から何度も言ってるじゃん」
「でも、なんか元気ないじゃん」
「そう言うお前こそ、妙にしおしおしてるぜ。俺は、お迎えもいいけど、このお見送りってのが苦手なんだ」
「行きはよいよい、帰りは……」
「洒落てる場合じゃねえよ。どうも、このお見送りってやつは、気が乗らねえもんだ。ため息ばかり出て、何を言ってもわざとらしく、もう、この辺でお別れしたいぐらいだ」
「やっぱり、お前も寂しいのかね」
「今回は大分、お世話になりました。お礼を言います」
「あの人は、やっぱりあそこで、ひとりで遊んでるんだろうな」
「俺にこんな綺麗な貝をくれたけど、これはまさか、食べるものじゃないよな」
「ちょっと竜宮にいるうちに、お前も、ものすごく食い意地が張ってきたな。それだけは、食べるものじゃないみたいだけど。俺にもよくわかんないけど、その貝の中に何か入ってるんじゃないの?」

原文 (会話文抽出)

「わあ、どうも、いかん。淋しいわい。」
「なんのわけだかわからないが、どうも、いかん。おい、亀。何とか、また景気のいい悪口でも言つてくれ。お前は、さつきから、何も一ことも、ものを言はんぢやないか。」
「怒つてゐるのかね。私が竜宮から食ひ逃げ同様で帰るのを、お前は、怒つてゐるのかね。」
「ひがんぢやいけねえ。陸上の人はこれだからいやさ。帰りたくなつたら帰るさ。どうでも、あなたの気の向いたやうに、とはじめから何度も言つてるぢやないか。」
「でも、何だかお前、元気が無いぢやないか。」
「さう言ふあなたこそ、妙にしよんぼりしてゐるぜ。私や、どうも、お迎へはいいけれど、このお見送りつてやつは苦手だ。」
「行きはよいよい、かね。」
「洒落どころぢやありません。どうも、このお見送りつてやつは、気のはづまねえものだ。溜息ばかり出て、何を言つてもしらじらしく、いつそもう、この辺でお別れしてしまひたいやうなものだ。」
「やつぱり、お前も淋しいのかね。」
「こんどはずいぶん、お前のお世話にもなつたね。お礼を言ひます。」
「あのお方は、やつぱりあそこで、たつたひとりで遊んでゐるのだらうね。」
「私にこんな綺麗な貝をくれたが、これはまさか、食べるものぢやないだらうな。」
「ちよつと竜宮にゐるうちに、あなたも、ばかに食ひ意地が張つて来ましたね。それだけは、食べるものでは無いやうです。私にもよくわかりませんが、その貝の中に何かはひつてゐるのぢやないんですか?」


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