太宰治 『お伽草紙』 「これも真珠かね。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『お伽草紙』

現代語化

「これって真珠?」
「何でもかんでも見たら真珠にしちゃうな。真珠は捨てられてこんなにたまるほどあるんだから。ちょっと手で掴んでみな」
「え、雹じゃん!」
「冗談抜き。じゃあ口に入れてみて」
「美味い」
「そうだろ?これは海のさくらんぼ。これを食べると300年老けないんだ」
「そっか、いくら食べてもいいってこと?」
「俺は老いぼれるのが大嫌いなんだよ。死ぬのは怖くないけど、老いぼれるのはキツい。もっと食べようかな」
「笑ってるよ。上見ろよ。乙姫様がお出迎えだよ。やあ、今日はいつもより綺麗だね」
「乙姫様?」
「そう決まってるじゃん。何をモジモジしてんの?さっさと挨拶しな」
「でも、俺みたいなのが名乗り出てもしょうがないし、そもそも俺たちの訪問って唐突すぎだろ。意味ないよ。帰ろっか」
「乙姫様はあなたのこと知ってるよ。階前万里って言うだろ?考えすぎないで、礼儀正しくお辞儀すればいいの。たとえ知らなかったとしても、乙姫様は警戒心なんてない方だから、遠慮はいらない。遊びに来たって言えばいい」
「そんな失礼な。あ、笑ってる。とりあえず、お辞儀するか」
「やりすぎ。ウザい。あなたは俺の恩人なんだから、もう少し威厳のある態度をしてよ。ヘコヘコお辞儀してたらダサいだけだ。おっと、乙姫様がお呼びだよ。行こう。胸を張って、俺は日本一のイケメンで、一流の洒落者だって顔して闊歩して。あなたは俺たちには偉そうなくせに、女の前では意気地ないんだな」
「いや、偉い人にはそれなりの礼を尽くさないと」

原文 (会話文抽出)

「これも真珠かね。」
「珠を見れば、何でも真珠だ。真珠は、捨てられて、あんなに高い山になつてゐるぢやありませんか。まあ、ちよつとその珠を手で掬つてごらんなさい。」
「あ、霰だ!」
「冗談ぢやない。ついでにそれを口の中に入れてごらん。」
「うまい。」
「さうでせう? これは、海の桜桃です。これを食べると三百年間、老いる事が無いのです。」
「さうか、いくつ食べても同じ事か。」
「私はどうも、老醜といふものがきらひでね。死ぬのは、そんなにこはくもないけれど、どうも老醜だけは私の趣味に合はない。もつと、食べて見ようかしら。」
「笑つてゐますよ。上をごらんなさい。乙姫さまがお迎へに出てゐます。やあ、けふはまた一段とお綺麗。」
「乙姫か。」
「きまつてゐるぢやありませんか。何をへどもどしてゐるのです。さあ、早く御挨拶をなさい。」
「でも、何と言つたらいいんだい。私のやうなものが名乗りを挙げてみたつて、どうにもならんし、どだいどうも、私たちの訪問は唐突だよ。意味が無いよ。帰らうよ。」
「乙姫さまは、あなたの事なんか、もうとうにご存じですよ。階前万里といふぢやありませんか。観念して、ただていねいにお辞儀しておけばいいのです。また、たとひ乙姫さまが、あなたの事を何もご存じ無くつたつて、乙姫さまは警戒なんてケチくさい事はてんで知らないお方ですから、何も斟酌には及びません。遊びに来ましたよ、と言へばいい。」
「まさか、そんな失礼な。ああ、笑つていらつしやる。とにかく、お辞儀をしよう。」
「ていねいすぎる。いやになるね。あなたは私の恩人ぢやないか。も少し威厳のある態度を示して下さいよ。へたへたと最敬礼なんかして、上品もくそもあつたものぢやない。それ、乙姫さまのお招きだ。行きませう。さあ、ちやんと胸を張つて、おれは日本一の好男子で、さうして、最上級の風流人だといふやうな顔をして威張つて歩くのですよ。あなたは私たちに対してはひどく高慢な乙な構へ方をするけれども、女には、からきし意気地が無いんですね。」
「いやいや、高貴なお方には、それ相当の礼を尽さなければ。」


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