太宰治 『人間失格』 「きのうは、どうも。ところで、……」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『人間失格』

現代語化

「昨日はありがとう。ところで、……」
「このノート、しばらく貸していただけませんか?」
「はい、どうぞ」
「この人、まだ生きてるんですか?」
「それが、さっぱりわからないんです。10年ほど前に、京橋のお店宛にそのノートと写真の小包が届いて、差出人は葉ちゃんに決まってるんですが、その小包には葉ちゃんの住所も名前も書いてなかったんです。空襲の時、他の荷物に混じってこれも不思議と助かって、私はついこないだ初めて全部読んでみて、……」
「泣きましたか?」
「いいえ、泣くというより、……だめね、人間も、ああなっては、もう駄目よ」
「それから10年、となると、もう亡くなってるかもしれないね。これは、あなたへの恩返しで送ってきたんでしょう。ちょっと大げさに書いてるようなところもあるけど、でも、あなたもかなりひどい被害をこうむったみたいですね。もしこれが全部本当なら、僕がこの人の友達だったら、やっぱり病院に連れて行きたくなったかも」
「お父さんが悪いんですよ」
「私たちの知ってる葉ちゃんは、すごく素直で気配りができて、お酒さえ飲まなければ、いや、飲んでも、……神様みたいないい子でした」

原文 (会話文抽出)

「きのうは、どうも。ところで、……」
「このノートは、しばらく貸していただけませんか」
「ええ、どうぞ」
「このひとは、まだ生きているのですか?」
「さあ、それが、さっぱりわからないんです。十年ほど前に、京橋のお店あてに、そのノートと写真の小包が送られて来て、差し出し人は葉ちゃんにきまっているのですが、その小包には、葉ちゃんの住所も、名前さえも書いていなかったんです。空襲の時、ほかのものにまぎれて、これも不思議にたすかって、私はこないだはじめて、全部読んでみて、……」
「泣きましたか?」
「いいえ、泣くというより、……だめね、人間も、ああなっては、もう駄目ね」
「それから十年、とすると、もう亡くなっているかも知れないね。これは、あなたへのお礼のつもりで送ってよこしたのでしょう。多少、誇張して書いているようなところもあるけど、しかし、あなたも、相当ひどい被害をこうむったようですね。もし、これが全部事実だったら、そうして僕がこのひとの友人だったら、やっぱり脳病院に連れて行きたくなったかも知れない」
「あのひとのお父さんが悪いのですよ」
「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、あれでお酒さえ飲まなければ、いいえ、飲んでも、……神様みたいないい子でした」


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