太宰治 『人間失格』 「たのむ! もう一箱。勘定は月末にきっと払…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『人間失格』

現代語化

「頼む! もう一箱。代金は月末に必ず払うから」
「代金はいつでも構いませんけど、警察の方がうるさいんですよ」
「そこをなんとか、ごまかして、頼むよ、奥さん。キスしてあげる」
「薬がないと仕事が全然はかどらないんだよ。僕にはあれが強精剤みたいなものなんだ」
「それなら、いっそホルモン注射がいいでしょう」
「冗談じゃないよ。お酒か、そうでなければあの薬か、どっちかでないと仕事ができないんだ」
「お酒はダメです」
「そうでしょ? 僕はね、あの薬を使うようになってから、お酒是一滴も飲んでない。おかげで体の調子がとてもいいんだ。僕だって、いつまでも下手くそな漫画を描いてるつもりはない、これから酒をやめて、体を直して、勉強して、きっと偉い画家になってみせる。今が大事なところなんだ。だからさ、ね、お願い。キスしてあげるか」
「困るわねえ。中毒になっても知りませんよ」
「一箱はあげられませんよ。すぐ使ってしまうんだから。半分ね」
「ケチだなあ、まあ、仕方ないよ」
「痛くないんですか?」
「それあ痛いさ。でも、仕事の効率を上げるためには、嫌でもこれをやらなければならないんだ。僕はこの頃とても元気でしょ? さあ、仕事だ。仕事、仕事!」

原文 (会話文抽出)

「たのむ! もう一箱。勘定は月末にきっと払いますから」
「勘定なんて、いつでもかまいませんけど、警察のほうが、うるさいのでねえ」
「そこを何とか、ごまかして、たのむよ、奥さん。キスしてあげよう」
「薬が無いと仕事がちっとも、はかどらないんだよ。僕には、あれは強精剤みたいなものなんだ」
「それじゃ、いっそ、ホルモン注射がいいでしょう」
「ばかにしちゃいけません。お酒か、そうでなければ、あの薬か、どっちかで無ければ仕事が出来ないんだ」
「お酒は、いけません」
「そうでしょう? 僕はね、あの薬を使うようになってから、お酒は一滴も飲まなかった。おかげで、からだの調子が、とてもいいんだ。僕だって、いつまでも、下手くそな漫画などをかいているつもりは無い、これから、酒をやめて、からだを直して、勉強して、きっと偉い絵画きになって見せる。いまが大事なところなんだ。だからさ、ね、おねがい。キスしてあげようか」
「困るわねえ。中毒になっても知りませんよ」
「一箱は、あげられませんよ。すぐ使ってしまうのだもの。半分ね」
「ケチだなあ、まあ、仕方が無いや」
「痛くないんですか?」
「それあ痛いさ。でも、仕事の能率をあげるためには、いやでもこれをやらなければいけないんだ。僕はこの頃、とても元気だろう? さあ、仕事だ。仕事、仕事」


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