太宰治 『黄村先生言行録』 「山椒魚はどれ、どこに。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『黄村先生言行録』

現代語化

「山椒魚どれ?」
「見世物になってますよ」
「淀江村!それなら間違いない。いくら?」
「1丈です」
「何言ってんだ。値段だろ」
「10銭です」
「安いな。嘘じゃねえか」
「軍人と子供は半額ですけど」
「軍人と子供?それ入場料じゃねえか。俺は山椒魚を買うつもりなんだよ。金も用意して来たんだ」
「先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。1尺20円として、6尺あれば120円、7尺あれば140円、1丈あったら200円、と俺は電車の中で計算してきた。ちょっと、見世物のおっさんをここに呼んできてくんねえか。ついでに宿の奴にお酒頼んどいて、なあ、この部屋汚いな、お前こんなとこでよく生活できてんな、まあ我慢するよ、ここでそのおっさんと酒飲みながらゆっくり話してみようじゃないか、商談には接待がつきもんだ。頼むよ」
「あの、変なことを言うようですが」
「前の見世物の、おっさんを、俺の部屋に連れてきてくれませんか。いや、実は、あの見世物の怪魚を(見世物の看板では、天然自然の大怪魚ってなってたけど)アレをね、ぜひとも買いたいって奴がいるんです。それが俺の先生なんだけど、しっかりした人だから信用してもらいたい、とにかくそう言っておっさんをね、連れてきて下さいませんか。お願いします。結構いい値段で買ってもいいって、その先生は言ってますから。とにかく、ちょっと、ひとつ、お願いします」

原文 (会話文抽出)

「山椒魚はどれ、どこに。」
「見世物になっているのです。」
「淀江村! それならたしかだ。いくらだ。」
「一丈です。」
「何を言っている。ねだんだよ。」
「十銭です。」
「安いね。嘘だろう。」
「いいえ、軍人と子供は半額ですけど。」
「軍人と子供? それは入場料ではないか。私はその山椒魚を買うつもりなんだよ。お金も準備して来た。」
「先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。一尺二十円として、六尺あれば百二十円、七尺あれば百四十円、一丈あったら二百円、と私は汽車の中で考えて来た。君、すまないが、見世物の大将をここへ連れて来てくれないか。それから宿の者に、お酒を言いつけて、やあ、この部屋は汚いなあ、君はよくこんな部屋で生活が出来るね、まあ我慢しよう、ここでその大将とお酒を飲みながら、ゆっくり話合ってみようじゃないか、商談には饗応がつきものだ。君、たのむ。」
「あの、へんな事を言うようだけど、」
「前の見せ物のね、大将を、僕の部屋に連れて来てくれませんか。いや、実はね、あの見せ物の怪魚をね(見せ物の看板では、天然自然の大怪魚という事になっていた)あいつをね、ぜひとも買いたいという人があるんです。それは僕の先生なんだが、しっかりした人ですから信用してもらいたい、とにかくそう言って大将をね、連れて来て下さいませんか。お願いします。相当の高い値で買ってもいいような事も、その先生は言っておりますからね。とにかく、ちょっと、ひとつ、お願いします。」


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