GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『黄村先生言行録』
現代語化
「ああ、梅だな」
「紅梅より白梅のほうがキレイですね」
「そうだね」
「先生、花嫌いですか?」
「好きだよ」
「美人ですね」
「美人じゃないよ」
「28くらいに見えますけど」
「疲れたな、休もうか」
「あっちのカフェ、見晴らしよさそうですね」
「面倒くさい、近いほうがいいよ」
「何か食べたいね」
「おしるこか甘酒か」
「何かガッツリ食べたいな」
「ほかにはないでしょ」
「親子丼とかないかな」
「丼も大きいし、ご飯も多いよ」
「でもまずかったでしょ?」
「まずかったね」
「先生、鯉がキレイですね」
「見事だな」
「鮎ってやっぱり姿がいいですね」
「泳いでるな」
「今度は鰻ですね。面白いな。みんな砂にへばりついてる。先生、どこ見てるんですか?」
「鰻だな。生きてるな」
「やあ、君はサンショウウオだ!サンショウウオだ。生きてるじゃないか。すごいね」
「初めて見ました」
「初めて見たよ。いや、前にも何回か見た気もするけど、こんなに近くで見たのは初めてだ。君、古代のニオイがするな。山の精気が漂ってるみたいだ。ランのランは山の谷間に糸を垂らした字って書くんだ。山の精気と言ってもいいな。すごいな」
「サンショウウオがお好きとは意外です。どこがいいんですか?先輩でサンショウウオの小説を書いた人もいますけど」
「そうだろう」
「きっと名作でしょう。あなた達にはまだ、この幽玄な、獣、いや、魚類、いや――」
「何ていうのかな、水族、つまり、アザラシの仲間だな、アザラシ、――」
原文 (会話文抽出)
「先生、梅。」
「ああ、梅。」
「やっぱり梅は、紅梅よりもこんな白梅のほうがいいようですね。」
「いいものだ。」
「先生、花はおきらいですか。」
「たいへん好きだ。」
「美人だね。」
「美人じゃありませんよ。」
「そうかね、二八と見えたが。」
「疲れたね、休もうか。」
「そうですね。向うの茶店は、見はらしがよくていいだろうと思うんですけど。」
「同じ事だよ。近いほうがいい。」
「何か、たべたいね。」
「そうですね。甘酒かおしるこか。」
「何か、たべたいね。」
「さあ、ほかに何も、おいしいものなんて、ないでしょう?」
「親子どんぶりのようなものが、ないだろうか。」
「どんぶりも大きいし、ごはんの量も多いね。」
「でも、まずかったでしょう?」
「まずいね。」
「先生、見事な緋鯉でしょう?」
「見事だね。」
「先生、これ鮎。やっぱり姿がいいですね。」
「ああ、泳いでるね。」
「こんどは鰻です。面白いですね。みんな砂の上に寝そべっていやがる。先生、どこを見ているんですか?」
「うん、鰻。生きているね。」
「やあ! 君、山椒魚だ! 山椒魚。たしかに山椒魚だ。生きているじゃないか、君、おそるべきものだねえ。」
「はじめてだ。」
「はじめて見た。いや、前にも幾度か見たことがあるような気がするが、こんなに真近かに、あからさまに見たのは、はじめてだ。君、古代のにおいがするじゃないか。深山の巒気が立ちのぼるようだ。ランキのランは、言うという字に糸を二つに山だ。深山の精気といってもいいだろう。おどろくべきものだ。ううむ。」
「山椒魚がお気にいったとは意外です。どこが、そんなにいいんでしょう。もっとも、僕たちの先輩で、山椒魚の小説をお書きになった方もあるには、ありますけど。」
「そうだろう。」
「必ずやそれは、傑作でしょう。君たちには、まだまだ、この幽玄な、けもの、いや、魚類、いや、」
「これは、なんといったものかな? 水族、つまり、おっとせいの類だね、おっとせい、――」