GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『乞食学生』
現代語化
「ビールだったらお母さんがいなくてもできるよね。栓抜きとコップ3つ持ってくるだけでいいんだから」
「僕は飲みませんよ」
「アルコールは罪悪です。僕はアカデミックな態度をとります」
「誰も君に」
「飲めと言ってないよ。変なこと言わないで、お姉さんに叱られますって言ったほうがわかりやすい」
「君は飲むつもりですか?」
「やめてください。僕は忠告します。君は一昨日もビールを飲んだそうじゃないですか。留置場にとめられたって、学校じゃ評判ですよ」
「よし、佐伯も飲んではいけない。僕が一人で飲もう。アルコールは本当に罪悪なんだ。なるべくは飲まないほうがいいんだ」
「ああ、まずいな」
「僕もアルコールは嫌いなんだ。でもビールはそんなに酔わないからいいんだ」
「アカデミックな態度ばかりは失いたくありませんからね」
「そうですとも」
「私たちはパルナシアンです」
「パルナシアン」
「象牙の塔か」
「五一郎君」
「僕にはすべてがわかってるんだよ。さっき君が僕に風呂敷包みを投げつけて逃げ出そうとした時、はっとすべてわかってしまったんだ。君は僕をだましたね。いや、責めるんじゃない。人を責めるなんて、難しいことだ。僕はわかったけれども、何も言えなかったんだ。言うのがつらくて、いっそ知らん顔していようかとさえ思ったのだが、いまビールの酔いを借りて、とうとう言い出したわけだ。いや、考えてみると、君が僕に言わせるように仕向けてくれたのかもしれないね。ビールを見つけてくれたのは君なんだから」
「なるほど」
「佐伯君にはそんな遠大な思いやりがあって、ビールのことを言い出したというわけですね。なるほど」
「そんな、ばかな思いやりってあるものか」
「僕はただその、ほら、――」
「わかってるよ。僕の機嫌を取ろうとしたんだ。いやそう言っちゃいけない。この場の空気を明るくしようと努めてくれたのさ。佐伯はこれまで生活の苦労をしてきたから、そんなことに敏感なんだ。よく気がつく。熊本君はそれと反対で、いつでも自分のことばかり考えている」
「いや、それは」
「そんなことは主観の問題です」
原文 (会話文抽出)
「おい、」
「ビイルだったら、お母さんがいなくても出来るわけだね。栓抜きと、コップを三つ持って来ればいいんだから。」
「僕は、飲みませんよ。」
「アルコオルは、罪悪です。僕は、アカデミックな態度を、とろうと思います。」
「誰も君に、」
「飲めと言ってやしないよ。へんな事を言わないで、お姉さんに叱られますと言ったほうが、早わかりだ。」
「君は、飲むつもりですか?」
「止し給え。僕は、忠告します。君は、おとといもビイルを飲んだそうじゃないですか。留置場に、とめられたって、学校じゃ評判なんですよ。」
「よし、佐伯も飲んじゃいかん。僕が、ひとりで飲もう。アルコオルは、本当に、罪悪なんだ。なるべくは、飲まぬほうがいいのだ。」
「ああ、まずいな。」
「僕も、アルコオルは、きらいなんだ。でも、ビイルは、そんなに酔わないからいいんだ。」
「アカデミックな態度ばかりは、失いたくありませんからね。」
「そうですとも。」
「私たちは、パルナシヤンです。」
「パルナシヤン。」
「象牙の塔か。」
「五一郎君、」
「僕には、なんでも皆わかっているのだよ。さっき君が僕に風呂敷包みを投げつけて、逃げ出そうとした時、はっと皆わかってしまったのだ。君は、僕をだましたね。いや、責めるのじゃない。人を責めるなんて、むずかしい事だ。僕は、わかったけれども、何も言えなかったのだ。言うのが、つらくて、いっそ知らん振りしていようかとさえ思ったのだが、いまビイルの酔いを借りて、とうとう言い出したわけだ。いや、考えてみると、君が僕に言わせるようにしむけてくれたのかも知れないね。ビイルを見つけてくれたのは、君なんだから。」
「なるほど、」
「佐伯君には、そんな遠大な思いやりがあって、ビイルのことを言い出したというわけですね。なるほど。」
「そんな、ばかな思いやりって、あるものか。」
「僕は、ただ、その、ほら、――」
「わかってるよ。僕の機嫌を取ろうとしたのだ。いやそう言っちゃいけない。この場の空気を、明るくしようと努めてくれたのさ。佐伯は、これまで生活の苦労をして来たから、そんな事には敏感なんだ。よく気が附く。熊本君は、それと反対で、いつでも、自分の事ばかり考えている。」
「いや、それは、」
「そんなことは、主観の問題です。」