太宰治 『乞食学生』 「どこかで、お茶でも飲みましょう。」…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『乞食学生』

現代語化

「どこかでお茶でも飲みましょう」
「そうですね。せっかくお近づきになったのですし」
「でも、女の子のいるところは避けましょう。今日は鼻がこんなに赤いんですから。人間の第一印象って大事ですよ。僕を初めて見た女の子なら、僕が生まれた時からこんなに鼻が赤くて、これからもずっと赤いんだって決めつけるに決まってます」
「じゃあミルクホールはどうですか?」
「どこでもいいよ」
「お茶に誘うなんてのは、お互い早く別れたい時に使う手なんだ。僕は人から追い出される前に、いつもお茶を飲まされた」
「それはどういう意味ですか?」
「変なことを言いますね。僕とこの方とお茶を飲むのは、お互いの親和力の結果です。純粋なんです。僕たちは里見八犬伝で共鳴し合ったのです」
「やめてください。やめてください。どうして君たちはこんなに仲が悪いんだ。佐伯の態度もよくないぞ。熊本君は紳士なんだ。一生懸命なんだよ。人の一生懸命な生き方を笑うのは間違いだ」
「君こそ笑ってるじゃないか」
「君は抜け目がなさすぎるだけなんだ」
「入りましょう。そこでゆっくり話しましょう」
「佐伯君はダメです。悪魔です」
「ご存知ですか?昨日留置場から出たばかりなんですって」
「知りません。まったく知りません」

原文 (会話文抽出)

「どこかで、お茶でも飲みましょう。」
「そうですねえ。せっかく、お近づきになったのですし。」
「しかし、女の子のいるところは、割愛しましょう。きょうは、鼻が、こんなに赤いのですから。人間の第一印象は、重大ですよ。僕をはじめて見た女の子なら、僕が生まれた時からこんなに鼻が赤くて、しかもこの後も永久に赤いのだと独断するにきまっています。」
「じゃ、ミルクホールは、どうでしょう。」
「どこだって、いいじゃないか。」
「お茶に誘うなんてのは、お互、早く別れたい時に用いる手なんだ。僕は、人から追っぱらわれる前には、いつでもお茶を飲まされた。」
「それは、どういう意味なんですか。」
「へんな事を言い給うな。僕と、このかたとお茶を飲むのは、お互の親和力の結果です。純粋なんだ。僕たちは、里見八犬伝に於て共鳴し合ったのです。」
「止し給え。止し給え。どうして君たちは、そんなに仲が悪いんだ。佐伯の態度も、よくないぞ。熊本君は、紳士なんだ。懸命なんだよ。人の懸命な生きかたを、嘲笑するのは、間違いだ。」
「君こそ嘲笑している癖に。」
「君は、老獪なだけなんだ。」
「はいろう。あそこで、ゆっくり話そう。」
「佐伯君は、いけません。悪魔です。」
「ご存じですか? きのう留置場から出たばかりなんですよ。」
「知りません。全然、知りません。」


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