太宰治 『乞食学生』 「きのうまでは、学生だったんだ。きょうから…

GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。


青空文庫図書カード: 太宰治 『乞食学生』

現代語化

「昨日までは学生だったんだ。今日からは違うんだ。どうでもいいでしょ、そんなこと」
「うん、僕も人のプライベートには踏み込みたくな い。深く聞いても、僕には何もできないことがわかってるから」
「俗物だね、君は。謝りばっかり言って。メチャクチャだよ」
「ああ、メチャクチャなんだ。いっぱい言いたいこともあったんだけど、面倒になった。黙って景色でも見てた方がいいよ」
「そんなふうになりたい。僕なんて、黙ってても黙っていられない。心にもない道化の真似でもしないと、生きていけないんだ」
「それは誰のこと言ってんの」
「僕のことでしょ。僕は昨日まで、お金持ちの家庭教師だったんだ。バカな一人娘に代数を教えてた。僕だって、教えるほどわかってないよ。教えながら覚えようとしてた。そこまでは、ごまかせたけど、道化の役割までさせられて」

原文 (会話文抽出)

「きのうまでは、学生だったんだ。きょうからは、ちがうんだ。どうでもいいじゃないか、そんな事は。」
「そうだね。僕もあまり人の身の上に立ちいることは好まない。深く立ちいって聞いてみたって、僕には何も世話の出来ない事が、わかっているんだから。」
「俗物だね、君は。申しわけばかり言ってやがる。目茶苦茶や。」
「ああ、目茶苦茶なんだ。たくさん言いたい事も、あったんだけれど、いやになった。だまって景色でも見ているほうがいいね。」
「そんな身分になりたいよ。僕なんて、だまっていたくても、だまって居れない。心にもない道化でも言っていなけれや、生きて行けないんだ。」
「それは、誰の事を言っているんだ。」
「僕の事じゃないか。僕は、きのう迄、良家の家庭教師だったんだぜ。低能のひとり娘に代数を教えていたんだ。僕だって、教えるほど知ってやしない。教えながら覚えるという奴さ。そこは、ごまかしが、きくんだけども、幇間の役までさせられて、」


青空文庫現代語化 Home リスト