宮本百合子 『ブルジョア作家のファッショ化に就て』 「ヤイ虫ケラ。俺に遭ったのは百年目だ。サア…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『ブルジョア作家のファッショ化に就て』

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「おう、虫けら。俺に会ったのは死ぬ間際だ。さっさと俺がお前の肉食ってやるから覚悟しとけ」
「あちゃあ、これはこれは。噂に聞く天狗様って、あんただったんだ。昔から天狗に会ったら、バラバラにされて食われるって聞いてたよ。この山じゃ逃げられねえし、もう覚悟は決めた。でも、こんなかわいそうな百姓にも、死ぬ前に一つだけ頼みがあるんだけど、聞いてくれるかい?」
「なんだ、早く言ってみろ」
「話じゃ、天狗ってなんだって化けられるって言うじゃん。どうせ食われるんなら、一度だけ、あんたが本当に大天狗なのか、見てみたいんだ」
「わけねえじゃん。何になれってんだ?」
「この山で一番デカイ杉の木になってくれよ」
「おお、すごいなこりゃ。こんなにデカイ杉の木見て死ねるなんてありがたい」
「どうだ、もういいか?」
「これで俺もずっと見たかったデカイものってデカイものはおかげで見られた。せめて最後の頼みは、あんたがどんなにちっちゃくなれるかだけど。一個のケシの実になって、俺の手のひらに乗ってもらえたら、心残りはねえ」
「わかった。俺は何にでも化けてやるさ」

原文 (会話文抽出)

「ヤイ虫ケラ。俺に遭ったのは百年目だ。サア喰ってやるから覚悟しろ」
「アアこれはこれは天狗様。話に聞いた天狗と云うのは、あなたのことでございましたか。昔から天狗に遭えば生身を八ツ裂にされて喰われるということは聞いておりました。この山中で逃れる術もありますまい。もう覚悟は決めました。然しこんな哀れな百姓にも一期の願いというものはございます。それを聞いては下さいますまいか」
「なんだ、早く云え」
「話では、天狗は変通自在のものだと云います。私もどうせ喰われるからには、どうか一目あなたがほんとの大天狗かどうかを、見て死にたいと思います」
「雑作もないことだ。註文を出せ。どんなものにでもなってやる」
「この山のどの杉の木より大きな杉になって見せて下さい」
「ああ、なんと素晴らしいことじゃ。こんな見事な杉の木を見て死ねるというのは有難い」
「どうだ、もういいか」
「これで私も日頃から見たいと思っていた大きなものという大きなものはお蔭で見られました。せめてこの上のお願いは、あなたがどの位小さいものになれるかということです。一つ罌粟の実になって、私の掌に乗ってもらえたら思い残すところはありません」
「ヨシ来た。俺は何んにでもなってやる」

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