宮本百合子 『歴史の落穂』 「婦人参政権の問題なぞもむしろ当然のことと…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『歴史の落穂』

現代語化

「婦人参政権の問題なんかもむしろ当然のこととして受け入れているくらいだ」
「でも人間は総じて男女の区別なく、どんなに正しくて当然なことでも、それを自分から主張したり出しゃばったりせず、どこまでも遠慮深くおとなしくしている様子が逆に奥ゆかしくて美しいんじゃないか」
「もし浮き上がるあてがなく、強い者に沈められて滅ぼされてしまうものであったならば、それはいわゆる月にむら雲、花に嵐の趣だ。弱いものを滅ぼす強者の卑しくて無礼で野蛮なことを証明すると同時に、滅ぼされる弱いもののなんと上品で美しいかを証明するだけだ」
「日本女性の動かしようのない美しさは、争ったり主張したりするのではなく、苦しんだり悩んだりする哀れなはかないところにある」

原文 (会話文抽出)

「婦人参政権の問題なぞもむしろ当然のこととしているくらいである」
「然し人間は総じて男女の別なく、いかほど正しい当然な事でも、それをば正当なりと自分からは主張せず出しゃばらずに、どこまでも遠慮深くおとなしくしている風がかえって奥床しく美しくはあるまいか」
「もし浮む瀬なく、強い者のために沈められ、滅されてしまうものであったならば、それはいわゆる月にむらくも、花に嵐の風情。弱きを滅す強者の下賤にして無礼野蛮なる事を証明するとともに、滅さるる弱きもののいかほど上品で美麗であるかを証明するのみである」
「日本女性の動かすことのできない美は、争ったり主張したりするのではなくて、苦しんだり悩んだりする哀れはかない処にある」

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