宮本百合子 『「インガ」』 「――俺の全生活が今開いたんだ。そいつを俺…

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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『「インガ」』

現代語化

「――俺の人生が今始まったんだ。それを俺は全部捕まえたい。何も逃したくない。――…ああ。分かるか? お前には…同じことなんだ、いろんな言葉で言ってみても」
「いろんな言葉? あの頃、お前さんが怪我してチブスになって運ばれてきた時、私たちはどういう言葉で話した? 夜、お前のベッドの横にいて看病してた時。2人が補助金だけで暮らして、お前さんは朝から晩まで本ばかり読んでた。私はミシンで働いて、お前さんに温かいご飯を食べさせてた頃、私たちは、どんな言葉で喋ってたっけ? ミーチカ!」
「大人になってさ」
「なんでそんなこと言うんだ? 今のこと話してるんだよ、俺は」
「私は長い長い年月を話してるんです、あなたに尽くしたことを。――あなたは自分自身のことを覚えてるだけ。――私はどう生きたと思います? あなたが兵隊に行ってる間、私は遊んで暮らしてたでしょうか?」
「昔は」
「――檻を貸してください!」
「どれ?」
「あれです」
「あれは赤ちゃんのものが入ってるから、貸せません」

原文 (会話文抽出)

「――俺の全生活が今開いたんだ。そいつを俺あすっかり捕えたい。何にも逃さないように。――……ああ。わかるか? お前に、……同じこった、いろんな言葉で云って見たところで。」
「いろんな言葉? あの時、お前さんが負傷してチブスんなってつれて来られた時、じゃ私たちはどんな言葉で話したろう? 夜、お前さんのわきに坐って看病してやったとき。二人が補助金だけで暮して、お前さんはあけても暮れても本にばっかりかじりついている。私はミシンで働いて、お前さんに暖いもの喰べさせていた時分、私たちは、じゃ、どんな言葉で喋ったっていうんだろう? ミーチカ!」
「育ってしまって」
「どうしてそんなことを云い出すんだ? 今のこと云ってるんだよ、俺は。」
「私はこれまでの永い永い年月のことを云ってんですよ、お前さんにやった。――お前さんは自分のことだけ覚えてる。――私はどんなに生きて来た? お前さんが兵隊に行っているうち、私はのんべんだらりとしていたかい?」
「昔」
「――籠をかしてくれ!」
「どの?」
「その。」
「ありや坊やのものが入ってる、やれないよ。」

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