GoogleのAI「Gemini」を使用して現代語化しました。
青空文庫図書カード: 太宰治 『富嶽百景』
現代語化
「いや、反対ってわけじゃなくて、」
「おまえだけで、やれ、みたいな感じらしいよ。」
「それでいいです。」
「うちも、見てもらったとおり金持ちじゃないし、堅苦しい結婚式とかはかえって面倒くさいから、あなたに愛と仕事への情熱があれば、それで私たちも満足です。」
「どう?もうちょっと付き合ってみない?」
「いや、もう結構。」
「何か質問ある?」
「あります。」
「富士山に、もう雪降った?」
「降りました。山頂の方に、――」
「なんだよ。甲府からだって富士山見えるじゃん。なめやがって。」
「今の質問は無視してください。なめやがって。」
「だって、御坂峠にいらっしゃるなら、富士のことぐらい聞いてもいいと思ったんだけど。」
「いいねお母さん。やっぱり御坂はいいよ。自分の家に帰ってきたみたい。」
原文 (会話文抽出)
「それで、おうちでは、反対なのでございませうか。」
「いいえ、反対といふのではなく、」
「おまへひとりで、やれ、といふ工合ひらしく思はれます。」
「結構でございます。」
「私たちも、ごらんのとほりお金持ではございませぬし、ことごとしい式などは、かへつて当惑するやうなもので、ただ、あなたおひとり、愛情と、職業に対する熱意さへ、お持ちならば、それで私たち、結構でございます。」
「どうです。もう少し交際してみますか?」
「いいえ。もう、たくさん。」
「なにか、質問ありませんか?」
「ございます。」
「富士山には、もう雪が降つたでせうか。」
「降りました。いただきのはうに、――」
「なあんだ。甲府からでも、富士が見えるぢやないか。ばかにしてゐやがる。」
「いまのは、愚問です。ばかにしてゐやがる。」
「だつて、御坂峠にいらつしやるのですし、富士のことでもお聞きしなければ、わるいと思つて。」
「いいねえ、をばさん。やつぱし御坂は、いいよ。自分のうちに帰つて来たやうな気さへするのだ。」