海野十三 『一坪館』 「ああ、入ってみておくれな、源ちゃん。せっ…

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青空文庫図書カード: 海野十三 『一坪館』

現代語化

「ああ、入ってみてよ、源ちゃん。ここまで来たんだから、せめて焼け跡くらい見てかないと、私は先祖に申し訳が立たないよ」
「はい、気をつけて。お母さん、上から電線が垂れてるから頭を下げてください」
「大丈夫よ。源ちゃん、気をつけてね」
「お母さん、そこがあなたのお宅の跡ですよ」
「まあ、きれいに焼けちゃったのね」
「かわいそうですね」
「仕方ないよ。矢口家だけじゃない、みんな同じだからね」
「でも……」
「私はラッキーだよ。だってさ、源ちゃんのおかげで三輪車に乗せてもらって命は助かったし、大事な先祖の位牌や書類とか着替えはこうして布団に包んでお尻の下にあるから無事でしょ?だからすごくラッキー」
「本当に運がよかったですね。火の手で行く手を阻まれて、もう死ぬかと思ったことが4回もありました」
「みんな源ちゃんのおかげだよ。慌てずに正しいと思ったことをやり抜いたから、急場をしのげたんだよ。でも源ちゃんはかわいそうね。私を助けてくれたのはいいけど、代わりに自分の持ち物は全部焼いちゃったんだろう?」
「はい、そうです。身一つになりました。でも、お店のためにはこの車を1台救ったわけですが、店の連中はどこに行ったんだか、誰も見かけなくて、心配です」
「どうしたのかなあ。もしかして、逃げ場所を間違えたんじゃないかしら?堀の中にたくさん死体があるって言うけどね」
「ところで、お母さんはこれからどうなさるんですか?」
「私はね、樺太にいる弟のところに行くつもり。ごめんね源ちゃん、この車で上野駅まで送ってくれないかしら?」
「はい、わかりました。でも樺太ですか?ずいぶん遠いですよね」
「でも、私の身内っていったら、樺太にお店を持ってる弟しかいないんだものね」
「ところで、源ちゃんにお礼をしたいんだけど、何かいい?」

原文 (会話文抽出)

「ああ、入ってみておくれな、源ちゃん。せっかくここまで来たんだもの、せめて焼灰でもみておかないと、わたしゃ御先祖さまに申しわけないからね」
「ええ、ようがす。おかみさん、上から電線がたれていますから、頭をさげて下さい」
「あいよ、わたしゃ大丈夫だよ。源ちゃん、お前気をおつけよ」
「おかみさん、そこがお宅のあとですよ」
「まあ、きれいさっぱり焼けたこと」
「おかみさん、お気の毒ですね」
「しようがないよ。矢口家一軒だけじゃない、よそさまもみんな同じだからね」
「それはそうですけれど……」
「わたしなんか、しあわせの方だよ。だってさ、源ちゃんのおかげで三輪車にのせてもらって生命は助かるし、大事な御先祖さまのお位牌や、重要書類だの着がえだのは、こうして蒲団にくるんでわたしのお尻の下に無事なんだからね。だから大したしあわせさ」
「ほんとうに私たち運がよかったんですね。行手を火の手でふさがれて、もうこんどは焼け死ぬかと思ったことが四度もあったんですがねえ」
「みんな源ちゃんのお手柄だよ。あわてないで、正しいと思ったことをやりぬいたから、急場をのがれたんだよ。しかし源ちゃんは気の毒ね。わたしをすくってくれたのはいいが、そのかわり源ちゃんの持ち物はみんな焼いちまったんだろう」
「ええ、そうです。着たっきり雀というのになりました。もっともお店のためには、この車一台をたすけたわけですが、店の連中はどこへ行ったんだか、誰も見かけないんで、私は気がかりでなりません」
「どうしたのかね、ひょっとすると、逃げ場所が悪かったんじゃないかね。濠の中にずいぶん死んでいるというからね」
「そうそう、おかみさん、これからどうなさいます」
「わたしゃね、これから弟のいる樺太へ帰ろうと思う。すまないけれど源ちゃん、この車で、上野駅まで送っておくれなね」
「はい、承知しました。しかし樺太ですって。ずいぶん遠いですね」
「でも、わたし身内といったら、樺太に店を持っている弟の外ないんだものね」
「それはそうと、源ちゃんに、わたしお礼を何かあげたいんだが、何がいい」

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