宮本百合子 『「迷いの末は」』 「厨房日記」…
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青空文庫図書カード: 宮本百合子 『「迷いの末は」』
現代語化
「台所日記」
「虚心坦懐っていうのは日本で一番偉い精神とされてるけど」
「今じゃ、どの国際列車もまだ乗り換えが必要だから」
「パリの人たちは自分や他人の利息のことについて口を出さない。もし一言でも触れたら、パリの生活の秩序が根底から崩れてしまうんだ。それは日本の義理人情みたいで、この生活を壊して自由はない。思想は生活の自由を尊重するものだから思想なんだ。でもその思想が市民の根底にある利息を減らして、自由な生活を壊す火を噴き上げてる今は、市民の思想ってどんなものなんだろう？」
「義理人情って世界に例のない認識の秩序の美しさ」
「生活の秩序を完成させるには、人は自分の意志で何もなくなる度胸を養わなきゃいけない」
「嘘みたいな本当の世界から」
「一歩進んだ芳江の肌の柔らかい感触だけが」
「強く光ってるのを感じると、触覚だけに頼って生きてる生き物の本当さが、この世の物の手応えで一番ありがたいと思われて、今さら子供の生まれた秘密の奥が覗けたような気が楽になって、また仰向けに手枕をして横になった」
「一人前になった」
原文 (会話文抽出)
「厨房日記」
「虚心坦懐とは日本でこそ最も高貴な精神とされているが」
「今のところ、如何なる国際列車もまだ乗換場所がいくつも必要だから」
「パリ人というものは自身や他人の金利のことについて口を出さぬ。もしこれに一言でも触れようものならパリ生活の秩序は根底から破壊されてしまうのだ。それは日本に於ける義理人情の如きもので、この生活を破壊して自由はないのであった。思想は生活の自由を尊重すればこそ思想である。しかしその思想が市民の根底をなす金利を減少せしめ、自由の生活を破壊に導く火を噴き上げている現在に於ては市民の思想とは如何なる種類のものであろうか。」
「義理人情という世界に類例のない認識秩序の美しさ」
「生活の秩序を完成さすためには人間は意志的に無になる度胸を養成しなければならぬ」
「嘘のようなうつつの世界から」
「一足さわった芳江の皮膚の柔らかな感触だけが」
「強くさし閃いているのを感じると、触覚ばかりを頼りに生きている生物の真実さが、何より有難いこの世の実物の手応えだと思われて、今さら子供の生れて来た秘密の奥も覗かれた気楽さに立ち戻り、又ごろりと手枕のまま横になった。」
「一人前に成長した」
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