海野十三 『断層顔』 「僕はみんな聞いていましたがねえ」…

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青空文庫図書カード: 海野十三 『断層顔』

現代語化

「私は全部聞いてましたがね」
「おじさんは今の女性に惚れてるんですか?」
「惚れているとは……よくもそんな下品な言葉を発し、下品なことを考えるな。最近の若者は礼儀知らずだ」
「だって、そう思うじゃないですか。おじさんは今のお客様から当然聞き出さなきゃいけない重要なことを、ポロポロ聞き逃してる。どうして名探偵がそこまで気が散ってるんですか?その答えは一つ。老探偵――いや、名探偵は恋をしてる、あの女性に惚れてるから……」
「それが君の推理か。ふふん。で、私がどんな重要なことを聞き逃したって言うんだ?」
「例えば、ええと……あの女性がなぜその男を恐れているのか、その理由を明確にしていませんよね」
「恐怖の理由は、あの人がはっきり説明してくれた。その男の顔がすごく怖いんだそうだ。それでいつもあの人を狙ってると思ってる。それだけだ」
「それは簡単すぎませんか?恐怖の理由をもっと深く追求すべきでした。本当の原因はもっともっと深いところにあると思います」
「君はわざわざ問題を複雑で深刻にしようとしてる。それは良くない。物事は素直に見ないと間違える」
「でも、それだとおじさんの判断は甘すぎますよ。これはすごい大事件です」
「そうかもしれないけど、とにかくあの女性の立場では、あれだけのことなんだ」
「私は同意できません、おじさん。あの女性が恐れているその男はどんな顔の男ですか?それを聞かなかったじゃないですか。これはかなり重要なことなのに……」
「そんなことは聞くまでもないよ。これから行って、あの人につきまとってるその男の顔を実際に僕たちが確認すれば一番はっきりするじゃないか」
「呑気ですねえ」
「ムサシ君。依頼者にはなるべく質問しないほうがいいんだよ。こちらでわかることは、聞かない方がいい」
「そうなんですかねえ」
「君も一緒に行ってくれるだろう。私はあと5分で出かける。もちろんあの怖い顔の男を見るためだ」
「私もちろんお供しますよ、おじさん」

原文 (会話文抽出)

「僕はみんな聞いていましたがねえ」
「おじさんは今の女に惚れているんですか」
「惚れているとは……よくまあそんな下品な言葉を発し、下品なことを考えるもんだ。今の若い者の無軌道。挨拶の言葉がないね」
「だって、そういう結論が出て来るでしょう。おじさまは今のお客さんから当然聞き出さなくてはならない重大な項を、ぼろぼろ訊き落としています。なぜ名探偵をして、かの如く気を顛倒せしめたか。その答は一つ。老探偵――いや名探偵は恋をせり、あの女に惚れたからだと……」
「というのが君の推理か。ふふん。で、私がいかなる重大事項を訊き落としたというのかね」
「たとえば、ええと……あの婦人がなぜその男を恐れているのか、その根拠をはっきりついていませんね」
「恐怖の理由は、あのひとがはっきり説明して行った。その男の顔がたいへん恐ろしいんだそうな。それがいつもあのひとをつけねらっていると思っている。それだけの理由だ」
「それはあまりに簡単すぎやしませんか。恐怖の理由をもっと深く問い糺すべきでしたね。真の原因は、もっともっと深いところにあると思う」
「君はわざわざ問題を複雑化深刻化しようとしている。それはよくないね。物事は素直に見ないと誤りを生ずる」
「でも、それではおじさまの判定は甘すぎますよ。これはすごい大事件です」
「そうかもしれないが、とにかくあの婦人の立場においては、あれだけのことさ」
「僕は同意が出来ませんね。おじさま。あの婦人が恐怖しているその男はどんな顔の男か。それを訊かなかったじゃないですか。こいつは頗る大切な事項なのに……」
「そんなことは訊くまでもないさ。これから行って、あのひとにまといついているその男の顔を実際にわれわれの目が見るのが一番明瞭で、いいじゃないか」
「呑気だなあ」
「ムサシ君。事件依頼者からは、なるべくものを訊かないようにするのがいいのだよ。こっちの手で分ることなら、それは訊かないに越したことはない」
「そうですかねえ」
「君も一緒に行ってくれるだろう。私はあと五分で出掛ける。もちろんあの恐ろしい顔の男を見るためにだ」
「僕はもちろんお供しますよ、おじさま」

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