三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』 「はい御免なさい」…
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青空文庫図書カード: 三遊亭圓朝 『敵討札所の霊験』
現代語化
「はい、お許しください」
「誰ですか?」
「おー、婆さんか。主人はどこへ行ったの?」
「今日は細田まで行ってるそうで、嫁も今お湯を貰いに行ったから留守よ。ま、お上がりなさい。お茶でもどうぞ」
「ああ、細田に行ったのか。それじゃちょっと帰らないんだな。婆さん、相変わらずお元気だねえ」
「元気って言っても、いつまでも生きてると迷惑だと思うけど、もう寿命だから仕方ないわね。早く死にたいって言ったら『死にたいってのは愚痴だ』ってお寺のご住職に小言を言われたのよ」
「長生きすればいいじゃないか」
「あなたもいつもお元気そうですね?」
「私は婆さんより20歳下だけど、私の年よりは婆さんのほうが元気だ」
「元気なんかじゃないわ。腰も曲がってるし、役に立たないし、夜になると眠くて」
「あなたは立派ないい嫁をもらうのに、まだお孫さんができないのね?」
「まだできないよ。あなたは何人子供がいるの?」
「私は二人です。長女に養子をもらったけど、養子はしっかりしたやつだからいいんだけど、息子が13になって奉公したいって言って、それからずっと深川の菓子屋で働いてるんだ」
「へー、そうなんだ。もう13歳なんだって? 早いもんだねえ」
「それでね、深川の猿子橋の近くの『田月』っていう大きな菓子屋の家に勤めてるんだけど、時々親が恋しくなったのか、来てくれって言うから、私も息子が迷惑にならないように、野菜があれば野菜を抜いて持って行ったり、ナスやきゅうりを切って売りに持ってくときに時々店にも行くんだ。そうすると私が帰ろうとすると、息子が後から出てきて、『これはお菓子の屑だから、お父さんが帰ったらお母さんに食べさせてあげて。こっちは東京のお菓子だよ』って言うから、盗み物で悪いぞって言うと、『お菓子屋ってのは屑をいくらでも食べてるけど、僕は食べたくないから、とっといてあげてよ』ってくれるんだ。私も嬉しくなるから持って帰って婆さんにこうだったこうだったって話すと、婆さんがこの家の婆さんが喜んで、『東京のお菓子ってのはすごく甘いね』って喜ぶんだ」
「へー、感心な子だねえ。親のために食べ物を贈るなんて、将来が楽しみだなあ」
「ところが婆さん、忘れもしない去年、ひどい目に遭ったんだ」
「へー、何があったの?」
「押込強盗に遭ったんだ」
「へー、どこへ?」
「息子が勤めてる菓子屋に押し入ったんだよ。こりゃあ怖かったよ、もう少しのところで殺されるところだったんだよ」
「へー」
「まだ夜だったらしいけど、商人の店は田舎と違って戸締まりしても内側の障子があるから、外から灯りが見えるんだ。すると婆さん、そこをがらがら開けて泥棒二人が入って、「お菓子ちょうだい」って言いながら奥をぴったり閉めて、鍵とチェーンをかけてしまったんだ。店には息子と17、8歳の若い衆と二人いたんだけど、そこに来て「声を出すと殺すぞ」って言ったら、息子も若い衆も何も言えない。すると「神妙にしろ。ご主人はどこにいる? 金はどこにあるか言え。声を出すと殺すぞ」って言ったから、もう魂消たんじゃないか。それから婆さん、入った奴は泥棒で自分が縛られているから人を縛るのが上手で、息子と若い衆をぐっと縛り上げて出られないようにして、居間の柱につないで、それから奥の間に入ると、旦那が奥の間で按摩を呼んで、横になって揉ませてもらってたんだけど、そこに一直線に入って来て、「金を出せ。お前の家は大きな菓子屋で金があるのはわかってる。さあ出せ。グズグズすると容赦なく殺すぞ。さあ金を出せ」って言ったから、旦那は魂消たんじゃないか魂消さないんじゃないか、もう旦那は口も利けない。「今上げます。命だけは助けてください」って言うと、「命までは取らない。金を出すなら帰るから金を出せ」って言ったから、旦那はそこらへんにしゃがみこんじゃったんだ。すると按摩を揉んでた按摩がすごい人で、そこにあった火鉢を取って泥棒の顔に投げつけたんだ」
「へー、怖いなあ。それで火事になったの?」
「火事じゃないよ。灰が目に飛び込んじゃって、「いたい、痛い」って騒いでると、按摩が一人で二人の泥棒を捕まえて、とうとう町の奉行所に突き出したんだよ。なんとすごい按摩だろう? おかげで旦那も助かったし、息子も助かったんだ。それからね、本当にありがたい。お礼のしようがないってことで、何も取られず、怪我もせず、こんな嬉しいことはないって言うんだけど、あんたはどこから来た按摩なんだろうって言うと、「私はここから5、6町先の富川町で按摩をしています。旅に出てる間に目が悪くなって、旅按摩になりました」って言うから、何かお礼をしたいけど何か欲しいものはないか、金をあげようかと言うと、「金はいりません。困っている人を助けるのは人の道です。私は何も欲しいものはありませんが、富川町に引っ越してから家族が干物を干すところがなくて困ってるんです。私も草花が好きなので、草花でも植えて楽しみたいと思ってるんですが、それにはもう少し地面と井戸が欲しいと思ってるんです」って言ったから、旦那が金持ちだから、「それなら地面を買ってあげよう」と言って、井戸も掘って、ナスを20本くらい植えられるようにしてくれたんだ。でもあの按摩はただの人でなかったんだよ。泥棒を抑えるときの態度が普通じゃなかったから旦那が聞いてみると、「もとは侍でしたが、事情があって坊主になって、それから目が悪くなりましたが、だんだんまたよくなって、今は按摩をしています」って言ったから、「やっぱりそうか。ただの人のようには思えなかった」って。私もお年始に行ったときに見たけど、立派な武士だったよ。確かにただの按摩じゃない。黒い羽織を着て、短い木刀を差して、それで按摩をしたり、針をしたりしてるんだって。針もなかなかすごいものらしいよ。評判になってるよ。その按摩の名前は確か『一徳』とか何とか言ったっけ」
「へー、もともと侍だったんだって? どんな人なんだろうね?」
「うん、何とか言ったっけ、忘れちゃった。ん、ん、何だよ。榊原様の家来で、一度坊主になってまた還俗したらしいけど、確か年齢は42、3で立派な男だった」
「へー、そうなんだね」
「お兄さん、出てきてください。今聞いたんですが、もとは侍で、一度出家なさって、また還俗して按摩になられたとのお話ですが、お名前は何と申しますか? その人の額に傷がありますか?」
「はい…おやお巡礼さんが出て行ってしまった」
「なに、これは私の孫だよ」
「へえ、婆さん、こんな孫さんがいたんですか?」
「小さい頃から他に行ってたから、あなたは知らないでしょう」
「そうだったんですか…額に傷がありますよ」
「じゃ年齢は何歳ですか? 40歳くらいですか?」
「ええ、そうですね。40か1、2歳上でしょうか」
「榊原の家来に間違いないですか?」
「ええ、そんなことを聞いたんですが…」
「今お話しを聞きましたが、その男は顔に傷があって、もとは侍で、一度出家して、その後に還俗した者だということでしたが、お名前は『水司又市』と申しますか?」
「おや、また巡礼さんが…」
「これも私の孫だよ」
「婆さん、あなたは本当にお孫さんが多いんですね…そうですね、もう忘れてしまいましたけど、あなたがおっしゃる通りの名前だったと思います。あなたはよくご存知ですね」
「そうだ、婆さん」
「まあ、そうだったんですか」
「本当ですよ。観音様の力はありがたいものだ。本当にすごいよ」
「ええ、それは本当におめでたいことです。もう少しのところで息子も殺されるところだったそうですが…後で泥棒を調べたら、一人は浪人で極悪人で、『何とか』と言って、もとは櫻井の家来だったそうで、もう一人は化け物みたいな名前で、『柳』の木の『幽霊』、『細い』手の『幽霊』いや、『柳の木』に『天水桶』か、うんと違うな、浪人は『柳田典蔵』で、『細い手』と言うのは『勇治』とかいう胡麻の灰ということがわかって、処刑されることになったそうです」
「…おい、ちょっと待てよ。これ、待たねえか? お前たち二人が駆け出しても、文吉が帰ってこなければ、向こうには泥棒を生け捕りできる又市がいるから、お前たちが駆け出しても細い腕では失敗するだろう。ちょっと待てよ、文吉が帰ったら相談して3人で行くんだぞ…」
原文 (会話文抽出)
「はい御免なさい」
「誰だい」
「おゝ婆さまか、家のは何処へ」
「今日は細田まで行くってえなえ、嫁も今湯う貰いに行ったから留守うして居ますわ、まアお掛けなさい、一服お吸いなさい」
「はア細田へ行ったゞかえ、それじゃアちょっくら帰らないなア、婆さま、まア何時も達者で宜いのう」
「達者だってこれ何時までも生きてると厄介だと思うけれども、何うも寿命だから仕様が無えだ、早く死にたいと云ったら死にたいと云うのは愚痴だって光恩寺の和尚様に小言を云われただ」
「長生すれア宜かんばいじゃアないか」
「お前も何時も達者だねえ」
「私アはア婆様より二十も下だが己の割にすると婆さまは達者だ」
「達者では私無いだ、腰もつん曲るし役にも立たないで、夜になると眠くてのう」
「あんたア立派な好い嫁を貰って、まだ孫が出来ないだねえ」
「まだ出来ないよ、あんたア子供は幾人有るだかなア」
「私ア二人でなア、惣領の姉に養子をしたゞが、養子は堅い人間だからまア宜いでがすが、弟の野郎が十三になり奉公をすると云うので、それからまア深川の菓子屋へ奉公に行ってるだ」
「はえゝ然うかえ、もう十三だって、早いもんだのう」
「それで何だ、深川の猿子橋の側の田月という大い菓子屋の家に奉公をしてるだが、時々まアそれ親が恋しくなると見えて、来て呉れというので、私も野郎が厄介に成ると思って、菜の有る時は菜を抜いて持ってッたり、また茄子や胡瓜を切って売に持って行く時にゃア折々店へも行くだ、するとまア私が帰ろうと云うと後から忰が出て来て、是は菓子の屑だから、父さま帰ったらお母に食わせて呉れ、こりゃア江戸なア菓子だと云ってよこすから盗み物でア悪いぞと云うと、なに菓子屋じゃア屑は無暗に食うのだが、己ア食いたくないから取っといて遣るのだと云って己がにくれる、己も心嬉しいから持って来て婆に斯う/\だと云うとなア、婆さま家の婆が悦びやアがって、江戸なア菓子はえらく甘えって悦ぶだア」
「はえーい感心な子だのう、親の為に食い物を贈る様な心じゃア末が楽しみだアのう」
「所がのう婆さま、忘れもしねえ去年中、飛んだ目に逢ったゞ」
「はえーい何うしたゞえ」
「何うしただって婆さま、押込が這入ったゞ」
「はえーい何処えなア」
「忰が行ってる菓子屋へ這入ったなア、こりゃア何うも怖なかったって、もう少しの事で殺される所だってえ」
「はえーい」
「まだ宵の事だと云うが、商人の店は在郷と違って戸を締めても潜りの障子が有るから灯火が表から見えるだ、すると婆様、其処をがらり明けて二人の泥坊が這入って、菓子呉れと云いながら跡をぴったり締めて、栓を鎖ってしまったゞ、店には忰と十七八の若い者と二人居る処え来て、声を立てると打斬ってしまうぞと云うから、忰も若い者も口が利けない、すると神妙にしろ、亭主は何処にいる、金は何処に有るか教えろ、声を出すと打斬ってしまうぞと云うから何うも魂消たねえ、それからなえ婆様、這入った奴は泥坊で自分が縛られつけてるから人を縛る事が上手で、すっかり縛って出られないようにして、中の間の柱に繋って置いて、然うして奥の間へ這入ると、旦那が奥の間で按摩取を呼んで、横になって揉ませて居る其処えずっと這入って来て、さア金え出せ、汝が家は大い構えの菓子屋で、金の有る事は知ってる、さア出せ、ぐず/\しやアがると拠ろなく斬ってしまうぞ、さア金を出せと云うから、旦那は魂消たの魂消ないの、まるで旦那は口い利かれない、只今上げます/\命はお助け、命だけは堪忍して呉れと云うと、命までは取らぬ、金さえ出せば帰るから金え出せと云うので、其処え蹲なんでしまっただ、するとお前旦那を揉んでいた按摩取がどえらい者で、其処に有った火鉢を取って泥坊の顔へぶっ投った」
「はえい怖ないなアまア、うん、ぶっ投って火事い出来したかえ」
「なに火事でなえ、灰が眼に這入って、是アおいないと騒ぐ所へ按摩取が一人で二人の泥坊を押えて、到頭町の奉行所へ突出したと云うのだが、何と剛い按摩取じゃアないか、是でお前旦那も助かり、忰も助かったゞ、それからお前、誠に有難い、お礼の仕様がないと云う訳で、物も取られず、怪我もせず斯んな嬉しい事アないが、お前は何処なア按摩取だと云うと、私は是から五六町先の富川町にいて按摩取を致します、旅へ出てる中に眼悪くて旅按摩に成りましたと云うから、何か礼をしたいもんだが何か欲しい物はないか、金を遣りましょうと云うと、金は入りません難儀を救うは人間の当然で、私は何も欲しい物は有りませんが、富川町へ引越してから家内が干物をする処が無いに困ってる、私も草花が好だから草花でも植えて楽みたいと思うそれには少し許の地面と井戸が欲しいと思って居りますと云うので、旦那は金持だから、それじゃア地面を買って遣ろうと云って、井戸も掘って、茄子の二十本許も植える様にして充がったゞが、何うも彼の按摩取は只の人でなえ、彼の泥坊を押える塩梅が只ではなえと思って旦那が聞いたら、元は侍だが仔細有って坊様に成りまして、それから私が眼潰れましたが、だん/\又宜く成りまして、只今では按摩取を致しますと云うから、何うも然うだんべえ、何でも只の人でなえと思ったッて、私もまア一寸年始に行った時見たが立派な武士で、成程只の按摩取でなえ、黒の羽織を着て、短い木刀を差して、然うして按摩をしたり、針をしたり何かするって、針も中々えらいもんだって、大変に流行るだ、何でもその按摩の名は一徳とか何とか云ったっけ」
「はえーい元は侍だって、何様な人だえ」
「うん、何とか云ったッけ忘れた、ん、ん何よ元は榊原様の家来で、一旦坊様に成ってまた還俗したと云うが、何でもはア年は四十二三で立派な男だ」
「はえーい然うかなえ」
「おじさんお出でなさい只今承わりました、元は侍で、一旦出家に成りまして、また還俗致して按摩取に成ったと云うのは、名前は何と申しますか、その人の額に疵が有りますか」
「はい……おや巡礼どんが出掛けて来た」
「なにこれア己が孫だよ」
「へえ婆さま、斯んな孫が有ったかえ」
「少さい時から他へ往ってたから、貴方ア知んなえが」
「そうかねえ……額に疵が有りますよ」
「じゃア年は何でございますか、四十ぐらいに成りますか」
「えゝ然うさ、四十もう一二ぐらいであろうか」
「元は榊原の家来に相違有りませんか」
「えゝ然ういう話だなえ」
「只今蔭で承まわりましたが、その男は顔に疵がございまして、もとは侍で、一旦出家いたして、その還俗した者というお話でございましたが、其の名前は水司又市と申しますか」
「おや/\/\また巡礼どんが」
「是も己がの孫だよ」
「婆さま、お前はまアえらく孫が幾人も有るなア……然うだ、己アもう忘れたが、アんたア云う通りの名前だっけ、あんたア宜く知ってるなア」
「それだよお婆さん」
「まあ然うかえ」
「本当だよ、観音様の御利益は有難いもの、本当に豪いもんだねえ」
「えゝそりゃア実に豪いもんで、もう少しで忰もぶち斬られる所だったが……後で泥坊をお調べになったら、一人は浪人者で極悪い奴だ、何とか云った、元は櫻井の家来で、それからが化物のような名前で、柳の木の幽霊、細い手の幽霊いや柳の木に天水桶か、うんそうじゃない、浪人者は柳田典藏で、細い手と云うのは勇治とかいう胡麻の灰という事が分って、お処刑に成ると云う話だ」
「……おいこれえ待て/\、これえ待たねえか、汝が二人駈出しても文吉が帰って来ないば、向うは泥坊を生捕るくれえな又市だから、汝が駈ん出してもか細い腕で遣りそこなっては成んねえが、これ/\待っちろ、文吉が帰ったら相談ぶって三人で往けよ…」
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